2015年9月27日日曜日

革靴を水洗い - SHETLANDFOX 3029SF INVERNESS -

シェットランドフォックスのインバネス。

晴れの日も雨の日もあまり気にせず履いていたせいか、なんとなく艶もなくなってきて、おまけにシミや塩吹きも目立つようになってきた。登板頻度が高いこともあり、ちょっと型崩れもしている。

インバネスに使われている仏アノネイ社ボカルーのようなアニリンカーフは一般的には水に弱いとされている。染料によって仕上げられた透明感のあるブラックが失われてしまうそうだ。
確かに、これまで土砂降りも含めて酷使してしまったので、ボカルー本来のみずみずしさが無いのだけれど、なんとなくインバネスのボカルーは最初からこんな感じだったような気がしないでもない。

毎度まいどの話だけれど、ビジネスシューズは雨に降られることは致し方ないと思って履くしかない。「雨の日履くな!」「天気予報見ろ!」というご意見は一理あるとは思うけれど、それじゃ雨の日は会社に何履いていくんだ、という話になってしまう。(わざわざ雨の日に履くこともない靴も世にはありますが、僕が想定しているのはスーツを着る一般の社会人が仕事上履く靴です)

ビジネスシューズではなくドレスの領域だって、娘の結婚式が大雨だったとしても手持ちで最高のキャップトウ履くべきだし、同じ靴を大切に履き続けて孫の結婚式でも履きたいと僕は思う。
天気がどうであれ出来事がまず中心にあって、それにふさわしい靴を履きたい。そのために僕が知りたいのは「○○するな!」の禁止ではなくて、それでもお気に入りの靴が雨に降られてしまったらどうすればよいのかというプロの意見。
ビジネスパーソンはビジネスをするために靴を履いているのだから、朝から大雨はともかく、天気予報まで気にして履く履かないを決めないとならない靴があったとしたら今の僕には無用の長物。

本格靴を扱う靴屋さんや靴の専門家の方にはぜひ、雨に降られた場合のお手入れをもっと情報公開してほしいと思う。リペアや顧客との対話を通じてお手入れのケーススタディを集められる環境で、靴の製法や素材による特徴などの情報も得やすい立場だけに、一消費者だけの経験則に比べてより多くのケースに基づくアドバイスができるのではないかと強く思う。禁止という安易な結論ではなくて、起こりうる(しかもかなり高い確度で起こる「雨」の)ケースに対してどう対処するかという専門家の意見にはとても興味がある。

僕自身は雨を否定的に捉えすぎないようにしている。もちろん買ったばかりだったり、思い入れのある靴が雨に降られるとちょっと悲しい。
また、どうしてもお気に入りのこの靴を履く、と決めている日は晴れて欲しいと思う。

でもたいていの靴は天気を気にしないで履けるようになった。
それは「雨が降ってもいい日用に格下げ」した靴ではなくて、晴れていても妥協が無く、雨だけの理由で避けることが無い靴で、どれもお気に入りの靴だ。

...と、ちょっと熱くなってきたところで、本題に戻ります。


先日、台風による連日の大雨でひさびさに外から中までびしょ濡れになったので、いっそのこと水洗いすることにした。
インバネスは購入してから何度も雨に降られていたけれど、いまだ一度も水洗いをしたことが無かった。

最近では「革靴に水は厳禁」のようなトーンが少し影を潜めて、むしろお手入れ次第では洗ったほうが良いという雰囲気もある。

「革靴を洗う」という行為は、一歩間違えると靴をダメにするというリスクと隣り合わせだし、実際に洗っている僕も、本当に大丈夫なのかという科学的な確証は全く持っていない。あくまでも実験的な意味合いでやっていて、なんとなく経験則的に大丈夫そうだという程度。見える部分はきれいになっていても、中物は大丈夫なのか、シャンクや釘はどうなっているのかなど見えない部分の状態は不明なまま。繰り返した場合どうなるかということも未知数。

僕がもし靴を縫うことができる技術があれば、一度ばらしてまた戻してみたいけれど、そういう技術を持ち合わせていない以上、見えない部分のリスクを負いながらやるしかないわけで。


※重要※
ここからは個人的な趣味による実験です。
素材や色、靴の作りによっては水洗いすることで取り返しの付かないダメージを与えてしまうことがあります。
高価な靴、大切な靴などは専門家にお任せすることを強くお勧めします。
(だからこそ、大きく濡れたときどうしたらよいかという専門家のアドバイスが欲しいわけです)

これまで、グラスゴー01DRCDを水洗いした記事を書いたので、かぶるところも多いのですが、いくつかやり方を変えたところもあるので、詳細に書いてみようかと。とても面倒な手順です。


今回は、これまでの水道水ではなく、より塩分や余計な脂分が抜けるように摂氏40度のお湯でチャレンジ。
ボカルーの染料まで溶け出してしまいそうとは思いつつ、その時はていねいにクリームで補色すれば良いのかなと。


今回使った道具
  • ステインリムーバー(M. Mowbray)
    ふだんのお手入れでは全く使わなくなったステインリムーバー。今回はお湯に付ける前に軽く塩を浮かせられないかなと思って使用。
  • 洗濯用中性洗剤『エマール』
    ウールなどの動物性繊維を洗うときに、よくある弱アルカリ性の洗剤を使うとごわごわした仕上がりになりやすい。おしゃれ着用として洗浄力は弱めだが生地にやさしい中性洗剤を使う。僕が靴から取り除きたい塩分と古いクリームはお湯で溶け出してしまうだろうから、洗剤はどちらかと言うと全体を清潔にする効果を期待。
  • スポンジ、ナイロンブラシ
    スポンジは全体を洗うために。ナイロンブラシはコバ周りを洗うために使用。
  • タオル、キッチンペーパー
    洗いあがりの水気取りに。最初にタオルで全体を拭って、キッチンペーパーを詰める。コンビニで2ロール100円くらいなので吸水性も良いキッチンペーパーは重宝する。スーパーとかホームセンターだともう少し安く手に入る。
  • サフィールノワールデリケートクリーム
    ずぶ濡れから乾燥に至る過程で、蝋分抜きで適度に加脂したいときはデリケートクリームがちょうどいい。蝋分がないか極力少ないものを選ぶ。
  • サフィールノワールレノベイタークリーム
    乾ききった後のコンディション調整に使う。ブートブラックのリッチモイスチャーもこのタイミングで使うのに良さそう。
  • サフィールノワールクレム1925
    補色と表面保護の仕上げ用。
  • M.モゥブレイモールドクリーナー
    靴の中のカビ防止スプレー。ふだんはめったに使わないが、水洗い後はカビやすいので必需品かと。
  • ソールコンディショナー(シェットランドフォックスでかったコロンブス製)
    水洗いでソールは相当油が抜ける。靴が完全に乾ききってから最後に多めに入れる。
  • コバインキ
    コバインキで仕上げると靴の印象が格段に良くなる。普段からコバの色抜けに注意すると新しい靴を履いているように見える。

汚れ落とし

靴ひもを外し、まずは固く絞った布で汚れ落とし。表面の泥やほこりを落とす。キズをつけないようにていねいに払うような感じで。その後全体を馬毛ブラシでブラッシング。コバの部分にはほこりなどがたまりやすいのでブラシの角をうまく使って落とす。

ソールは小石などが挟まっていたらできる限り取り除いておく。

今回はひさびさにステインリムーバーを使ってみた。

ボトルをよく振ってから布に多めにつけ、塩が吹いているところを中心に靴を湿らせるように軽く拭う。その後、乾いた部分でふき取ると結構色が落ちる。ついでに余計なクリームの一部も取れているようで、全体をぬぐった後はややテカリが無くなっている。

水洗い

全体を水で洗う。黒色の靴なのであまりシミは考えず(というかどうせ目立たないだけでシミはある)、水をかけてしまう。

ここでは洗剤をつけずに、まずソールを指で撫でて汚れ落とし。その後アッパーをよく撫でて表面の塩気やステイリムーバーの残りを落とす。最後に靴のなかによく水を入れてを軽くブラシ掛け。インソールを最後にしているのは、ある程度水が浸みるのに時間がかかるため。

お湯に漬ける

摂氏40度のお湯をためて、その中に漬けておく。洗剤はこの段階では使わない。今回は20分ほどつけて、その後お湯を入れ替えて15分ほど漬けておいた。

水につけておいたときと比べると、明らかに水(というかお湯)が茶色に変色している。それだけ色が落ちているということかな。
あまり高温だとそれこそタンパク質が変性してしまいそうなのでもう少し低い温度のほうがよいのかもしれない。
途中で1度入れ替えるのは、せっかく水に溶けだした塩分や古いクリームが靴全体に再付着するのを防ぐため。

洗剤で洗う

エマールをスポンジにつけてアッパーとインソールを洗う。
最近デザイン変わりましたね。
片足1~2分程度。アッパーは泡で表面を洗うような感じでなでるように洗う。インソールはもう少し力を入れるけれど、それでも軽くこするといった程度。
サドルソープってどうなんでしょう。アルカリ性の洗浄液は牛革のたんぱく質を壊すので良くないという意見がある一方で、靴に造詣が深い方で愛用されている人もたくさんいる。仕上げも洗い流すのではなく、拭きとるだけ。これって次に雨に降られたらまた石鹸成分が溶けだしてしまうのでは無いかといつも思う。
中性洗剤は汚れ落ちがイマイチとされているけれど、今回の洗う目的は雨の中歩いたことによる汚水由来の汚れとか塩分を取り除くため。なので、漬け置きした後は表面に残っている汚れを落とすという感じで。

すすぎ

洗い終わったら水で洗剤を流す。まずは水道水でジャバジャバ水洗いして、泡が無くなったと思った頃に靴の中をシャワーでよく洗い流す。すすぎは泡切れが良いようにふつうの水で。
革靴用ではない洗剤を使っているので、洗剤が残らないようにていねいにすすぐ。

最後に流水に1時間くらい漬けておく。
洗剤と塩分を完全に抜くために少し時間を長くしている。洗剤で洗ったため少し毛穴が開いていたらそこから余計な汚れが取れたらいいなぁと。
ここまでが洗い工程。

水気取り

すすぎ終わってからが靴洗いの難所。完全に濡らしてしまう洗いの工程まではあまり神経質になることもないけれど、ここから乾燥する間は一歩間違えると靴を台無しにしてしまう。
革靴は種類の違う革が縫い合わされていたり、縫い糸は麻だったりナイロンやポリエステルだったりで革とまた伸縮率や乾燥のしやすさも違うだろうから一気に乾燥させるとどこかに負荷がかかりそう。そんな心配もあるのでごくごくていねいに。

アッパーは上から押さえるように、中はふき取るような感じでタオルで水分を取る。ある程度取れたらキッチンペーパーを靴の前半部分だけきつめに詰めて15分くらい放置。その後入れ替えて1時間くらい放置する。靴は風通しの良いところに置いておく。うちでは24時間換気をONにして浴室においている。浴槽は湿気を防ぐために風通しがよく設計されているので、ちょうどよく乾燥できる。靴の置き場所によっては風が当たりすぎるので適度にそよ風が当たるような場所に設置。浴室乾燥機能は温度が高くなるので使わない。あくまでも送風のみで。

靴全体に加脂

1時間くらいたって一度キッチンペーパーを取り除いたら、この段階でアッパーにごく薄く、インナーには少し多めにデリケートクリームを入れる。特にインソールはクリームの塗った量がわかるように指で塗りこむ。キッチンペーパーを入れ替えて一晩放置。
この段階では光らせる必要もないし、そもそも表面に膜を作るようなものは乾燥の邪魔なのでデリケートクリームがベストと思っている。サフィールノワールはミンクオイル配合なので、こういう塗れ状態の保革にはラノリン主体のM.モゥブレイのデリケートクリームのほうが良いのかな。

陰干し乾燥

翌朝にはキッチンペーパーを取り除き、室内でそのまま夜まで放置する。この時表面を触ってみて、ある程度革に柔軟性があるかチェック。今回は少し硬い感じがしたのでごく少しだけデリケートクリームを追加。
カビ防止と乾燥しやすいようにツリーなどは入れない。

調整

夜になったらほぼ靴の表面は乾燥するので、いったんツリーを入れ固く絞ったタオルで表面を吹く。これは乾燥の過程で内部に残った塩分やデリケートクリームが表面に浮き出ているかもしれないという気休め。全体を軽く拭ったらデリケートクリームを再度入れ込む。デリケートクリームは薄く二度塗り。一度目で革に浸透する度合いを見ながら、よく吸収される部分には少し多めに二度目を塗る。
全体が少し息を吹き返したような感じになる。


クリームがリセットされるので、表面はざらざら感が目立つ。最後にクリームで仕上げるのが楽しみな状態。
デリケートクリームを塗り終わったらツリーを抜いてさらに乾燥させる。

保湿

また1日おいてから最後にレノベイタークリームを入れる。この段階では仕上げの調整みたいな感じで薄塗り。
お手入れの時にはツリーを入れるが、お手入れが終わったらモールドクリーナーを靴内部に軽くかけてツリーは抜いておく。モールドクリーナーは屋外まで靴を持っていき、片足2プッシュくらい。1プッシュでもかなりの量が出るので、靴の中が結構湿る。カビは靴の中で甲が当たる側にも生えるので、上側にもよくかかるようにする。
過去にここで靴の形を整えようとしてツリーを入れておいたらカビが生えたことがあった。せっかく洗って清潔になったので、確実に乾燥する前にツリーは入れないことにした。

仕上げ

もう一日くらい置いて、水分がある程度抜けきったら仕上げ。ツリーを入れてから、アッパーに補色も兼ねてクレム1925のブラックを薄塗り。コバ部分にはペネトレイトブラシでクリームを塗りこむ。
ボカルーの黒はブルー系の黒なのでサフィールよりイングリッシュギルドのほうが相性が良いのかなという気もしつつ、使い勝手のよくわかっているクレム1925を使っている。
エッジも色が落ちているのでコバインキを塗る。
最後にソールコンディショナーで乾ききったソールに潤いを与える。中のコルクがなかなか乾燥しないはずなので、ソールのメンテナンスは一番最後がいいと思う。あまり早い段階から油分を入れてしまうと内部の乾燥が遅れてしまいそう。

あとはツリーを入れてしばらく部屋に置いておく。
乾いているように見えても、まだまだ内部には湿り気が残っているのではないかという気がするので、1週間くらい放置しておく。

水分が抜けて元通りになったと思われるころを見計らって、クレム1925を再度塗る。
さすがに油分が抜けているのか、クリームが良く入るのでいつもより気持ち多めに塗る。
つま先やかかとなど保護が必要なところがより多めに。

豚毛のブラシでよくよくブラッシングしてから、最後に乾拭き。
乾拭きには少し時間をかけてていねいに。


仕上がりは想像以上に艶が回復している。
毎度水洗いの後の仕上がりを見ると、靴を全部洗いたくなる。
紐も新品に交換して完成。


今回はインバネスに続いて01DRCD洗ったので比較の参考画像。

インバネスの仕上がり


同時に洗った01DRCDの仕上がり


01DRCDのほうが少しきめが細かい。
思ったより靴全体に艶が出ているので、つま先をちょっとだけポリッシュしたほうがメリハリがついてよいかな。

ちなみにグラスゴーは洗った直後はこんな感じ。
この靴は独特の光沢が出る。

どの靴も洗ってていねいに仕上げた後は、新品とは異なる何とも言えない仕上がりになる。
僕はこういうことが趣味なので時間を費やすことにためらいが無いけれど、実際にこれをメンテナンスと考えてやったら大変だなと。やっぱりプロの技術や機材はすごいなと思うのです。


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ステインリムーバーは表面を湿らせて拭う程度に使えば汚れ落としには便利。水性だからワックス落ちないという人もいるみたいだけれど、界面活性剤なのだからそれなりに落ちると思う。小さいサイズがあれば十分かと。


デリケートクリームはサフィールノワールを使用。M.モゥブレイでも良いかも。


保革にはレノベイタークリーム。補色は無いけれど、下地にこれを入れると仕上がりが恐ろしく艶やかになる気がして、よく乾燥させた後に塗るようにしている。


仕上げのクリームはサフィールノワールクレム1925で。


カビ防止のモールドクリーナー。カビが生えた靴でもこれを使ってお手入れをすると、その後はカビが生えてこないので効き目は絶大かと。片足2プッシュくらいで靴の中がしっかり湿るくらいにかける。


ソールが完全に乾いたころにソールコンディショナーを入れる。僕はシェットランドフォックスのものを使っているけれど、ソールケアを目的に出されているものならなんでもよさそう。


仕上げはコバインキ。水洗いをするとコバ周りの艶がなくなってしまう。黒のワックスでもよいとは思うけれど、水性インキはお手入れが楽。コバクレヨンよりも簡単かつ結果が安定している。ざらざらな表面はやすりがけしたほうが良いと思う。

2015年9月5日土曜日

SHETLANDFOX 3048SF GLASGOW 2nd Report

ここ最近、このブログのいちばん人気の記事は「革靴のサイズ選び」で、次が「革靴を水洗い - REGAL 01DRCD -
靴個別で見るとW10BDJ01DRCD、に続いてこのグラスゴーが3番目に付けている。


シェットランドフォックスでもいま風のロングノーズ、抑えめな価格、比較的懐が深いラストで、入手もし易いこともあり人気のモデル。
購入から3年くらい経過したので、その後について書いてみたいと思う。

一部、というか結構な人が残念としているアッパーのフラスキーニ社チプリアは後からワックスなどで色を乗せたような革。アニリンカーフとは全く異なる質感で、それがきめ細かな素材感と奥からじわりと光る革を好む通からみるとややチープな印象をもたれてしまいがち。ちょうどその逆張りで、これはこれで良い所もたくさんある。
特に、履きこむとかなり柔らかくなり、薄めのソールと相まってとても履きやすい靴。柔らかくなるということは型崩れもしやすいのだけれど、長時間履いた時の足への負担は小さい。

チプリアはクリームを多めに入れると簡単に艶が出る。ボックスカーフのような湿った感じの鈍い光り方ではなく、ワックスなどを活かすような艶やかな光り方をする。こういうわかりやすい光り方は派手目を好む向きには向いている。クリームを多めに塗っても曇ることが少なく、革靴のお手入れになれていない人にも優しい。

僕はこの靴はサフィールノワールクレム1925を使ってお手入れしている。よく乾拭きしているせいか、ちょっとした雨くらいなら余裕で水をはじいてくれる。クリームが十分浸透した後はそれほど神経質にならなくてもいいかも。シミにもなりにくい。
ただ、クリームの量が多いのか、それとも登板頻度が高いのか、塩を吹きやすい靴のような気がする。この靴はこれまで2度ほど水洗いをしているのだけれど、それでも塩を吹くということはひょっとすると内部の湿気を吸収しやすい素材なのかもしれない。

 
かなりの雨に濡れて乾いた後はこんな感じ。ここまで出るようになると、水洗いをしないと跡が取れない。

購入してから週に1回弱程度の登板で、天候を気にせず履いている。これまで一度つま先の補修をしたくらいで、そろそろかかとの補修をしようと思っているところ。

ワックスを使った鏡面仕上げをしない僕でも、クレム1925だけで靴全体が強烈に艶やかになる。一度ごく少量の水を浸けて少し多めにクリームを入れたら、簡単に鏡面の手前くらいになってしまった。
水洗いをしても型崩れをしないように乾燥させ、適宜クリームをいれているせいか大きな型崩れもないし、むしろアッパーの革が馴染んできていい感じ。

よく言われる擦り傷も、クリームをていねいに入れると目立たない。

しわも当初は深く入っていたのが、履き続けていくうちにたいていの部分は細かなしわに落ち着いてきた。インバネスのボカルーのほうがよっぽどキツイしわが入る。
ツリーはシェットランドフォックスの純正か、ディプロマットヨーロピアンをつかっている。

ある程度時間が経つと脂分が浸透して革の表面が強くなるみたいで、購入当初感じていたパサつき感はそれほど感じない。購入直後にはわからない特長がじわじわ出てきている感じ。

グラスゴーは履き始めからあまり痛いところがない靴だった。実はゆったりとしたラストであることもその理由のひとつ。この靴は同サイズで見るとインバネスよりもはるかにゆったり。特に二の甲あたりはその後に出たシェットランドフォックスのモデルよりもはるかに大きい。

グラスゴーはエジンバラの廃止に入れ替わるような形で出てきたため、当初はエジンバラのリファインモデルのように受け取られる事もあった。(製造元も同じっぽいし)
スクエア寄りのデザインということを除いてはエジンバラとは全く異なる別コンセプトの靴だと思う。

エジンバラや初代ナイツブリッジなど、シェットランドフォックス復活直後に設計されたモデルで評判があまり良くなかったかかとはコンパクトに修正され、登場当時人気のあったチゼルなロングノーズに変更。甲の高さも気持ち抑えている。
正統なクラシックど真ん中からみると異端ともいえるこれらのキーワードを、無難かつスマートにまとめているデザインは秀逸で、意外と似たような靴が見当たらない。

またこのグラスゴーはかかとのクッションが少し集めでおわん形に整形されていることもあり、やや立体的な履き心地。この作りもかかとの収まりが良いような印象につながっている。

グラスゴーは最近のモデルと比較すると履き口まわりは少し大きい。登場当初は薄めな若い人向けのラストのような意見もあったけれど、いまとなってはシェットランドフォックスの中では大きめなモデル。
グラスゴー。右側くるぶしのあたりに少し余りがある。グラスゴーは足首回りはゆったり取っていて、甲もそれほど果敢に攻めていない。わりと万人向けかも。ただ、かかとの収まりはとても良いので、ゆるい感じはしない。僕の足では1cm弱羽根が開く。

インバネス。履き口がグラスゴーよりコンパクト。くるぶしの外側がフィットしている。甲の開き具合も少し広く、抑えめな甲であることが解る。グラスゴーとそれほど違わない時期に買ったけれど、こちらはまだ革が硬い。ボカルーにもピンキリでインバネスに使われているもののグレードは高くなさそう。

01DRCD。こちらも甲から履き口まわりはインバネスと似た印象。インバネスより少し羽根が閉じている。二の甲に余裕がある。指周りはこちらのほうがゆったり。

アバディーン。さすがに甲が低い。足が薄いけれどロングノーズが履きたい人はこっちでしょう。僕の場合は二の甲あたりからすでに羽根が開いていて、ちょっとばかり格好悪い。

全体のデザインはややカジュアルに振られている。
キャップトウのモデルはスワンネックを採用しながらも、ステッチの糸が少し太めで切り返しの内側にもステッチがある。開発時のターゲットは少し若い人向けかな。

スマートな印象を受けるシングルソールは真ん中がへこみやすい。
グラスゴーのソールはドットが配されていて独特。ややグリーンが入ったようなブラウンの色合いも独特で、新品の状態だと一風変わったラバーソールのようにも見える。

また、雨の日に履くことが多いこともあって、革の締りが良くなった。細かく見るとひび割れらしきものもあるけれど、革が割れるようなことはない感じ。底を押した感じではもう少しいけそうな。

屈曲部分はステッチが表に出てきているけれど、切れることもなく案外丈夫。

コバ周りは普段はホコリ取りのブラッシングくらいで余りクリームも入れてないのだけれど、ほつれも全く見られず、ウェルトもまだ行けそう。

そんな状態なのでもう少しいけそうな感じもしつつ、今度ヒールの修理に行ったときにオールソールにすべきかどうか聞いてみよう。

登場してからもう5年くらいになるけれど、いまでも売れ筋モデルではないかと思う。このモデルは価格も比較的抑えられていることもあり、伊勢丹をはじめとした百貨店、ミマツ靴などの一般的な靴屋さんでも売られている。(逆にREGAL SHOESではあまり見ない気がする)
かかとのように抑えても余り違和感を感じないところは収まり良く抑えて、ボールジョイントや甲の部分は控えめに押さえる作りは、革靴を初めて履く人でも受け入れやすい。
そんな懐深いラストであることからも、売りやすいモデルなんだろうと思う。

ロングノーズといってもとんがりでもなく、足がスマートに見える靴。どちらかというと細めのスーツに合いそう。店頭では結構きれいな鏡面仕上げがされていたりもするので高級そうな靴にも見える。
僕は最初アバディーンを見たとき、これはやりすぎだろうと思ったけれど、グラスゴーを初めて見たときは少し長いとは思いつつ、キャップが気持ち大きめなせいか全体ではバランスが取れていて格好良く見えた。

およそ3年経って当初受けた印象よりもずっと良い靴であることを実感する。これだから革製品(特に靴)は経年変化を見るまではわからないな、と思わずにはいられない。
長時間歩くとき、天気がどうなるかわからない時、マメができて痛い時などはこの靴を自然に選んでしまう。まさにビジネスシーンで活躍する靴。僕の身の丈に合った靴と言えるかな。



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なかなか新しい靴を買うところまでいかないので、しばらく記事にアフィリエイトを入れてみました。記事の一番下に入れてみているので、気分を害さない方はこちらのバナーから商品を買ってもらえると嬉しいです。
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グラスゴーにはサフィールノワールクレム1925が合う気がする。気持ち多めにいれてよくブラッシングと乾拭きすると当初の欠点に思えた部分が解消されるかも。