2015年4月23日木曜日

CROCKETT&JONES AUDLEY LAST337

チャーチのコンサルと並んで、英国靴として人気が高いクロケットアンドジョーンズのオードリー(Audley)。

もうだいぶ前に買ったのだけれど、あまり足に合わない感じがして(だいぶ緩い)しばらくお蔵入りだった。いくらエレガントでも、作りにこだわりがあっても、知名度が高くても(これはあまり関係ないか)、やっぱり靴って履いて歩くものだから、合わない靴はだんだんローテーション頻度が低くなる。

いきなり低評価っぽい書き出しなのは、靴の良し悪しではなくて、単に僕と靴との相性がゆえ。

あまり履かない靴について書くのもどうかと思うところもあれど、クロケットアンドジョーンズは日本製の靴とはあまりにも違いが大きい気がするのに、日本で売れている(百貨店の取扱いも多い)靴みたいなので、ちょっとメモとして記録しておこうと思う。

オードリー自体は本当にいい靴。合う人は羨ましい。
微妙なロングノーズ加減に大きすぎず小さすぎずまとめられたキャップ。しっとりとしたレザーの質感など見た目の良さでは僕の手持ちの中ではいちばんだと思う。ラウンドトウ好きな僕から見ても、このなんとも言えない造形は「定番」と読んでもおかしくない。クロケットアンドジョーンズ社長のジョナサン・ジョーンズ氏がいうように、「良い革、作り、クラシック」といった言葉でまとめることができる。
もちろん、予算に上限を入れなければ、もっと良い革、もっと凝った作り(ハンドとか)はある。でも、そこそこの(とはいえ割引あるところで買っても8万円近くするけど)靴としては満足度が高いのではないだろうか。

日本でクロケットアンドジョーンズが流行りだしたのは、多分20年以上前だった気がする。その頃はOEM主力の工場が自社ブランドで打って出たみたいな位置付けで、ちょうどいま国内で言うところのビナセーコーやMIYAGIKOGYOみたいな印象だった。

いまでは正規代理店経由だと10万円近い靴になってしまった。日本ではチャーチと並んで人気が高い英国靴なのではないかな。

日本製の靴に比べるとボールジョイントから先がかなり狭い。ギリシア型の足に合いそう。僕が履くと夕方ころにはかなり小指側が痛くなる。点で当たるというよりも面で内側に寄せられる感じ。

一方、くるぶしから甲の外側はかなり(というか、ありすぎるほど)ゆとりがあって。足首周りはブカブカになってしまう。全長はかなりタイトめなのでつま先がきつくて足首回りが緩いという感じ(Eウイズ)。
アバディーンやパラティーノで足首周りがいい感じの人はかなり余ってしまうと思う。

大きいといわれるかかとは、ほかの国産靴と比べてもそれほど極端に大きいわけではない。底面は少し幅広ではあるけれど、上面に向かって絞り込まれている。実際に履いてみてもかかとがぶかぶかというわけではない。むしろ履き口、特に甲の外側が大きく、足首回りの容積が大きいことがフィットしない主要因。ここに過度なゆとりがあるためかかとが収まる感じが弱く、またインソールが全敷のため結果として前すべりして、それが指への負担を強めている。明らかに捨て寸のところまで足が入ってしまっている。(靴の後半部分をまとめて「かかと」と呼ぶのであれば確かにかかとが大きいと言える)
右がオードリー、左がシェットランドフォックスのアバディーン。下部が少しポテっとしているけれど、上に行くに従って絞りこまれている。

一方、履き口周りは明らかに周が大きい。かかと側はそれほど差がなく、甲側の大きさが結構違う。

甲も足首近くまで覆うアバディーンと比べるとかなり手前で終わっている。

国産靴(と一概には言えないが)と比較して全体的に、とくに足首近くの甲からかかとの肉付きが良い人向け。薄い人だと足首回りの甲の部分でのフィット感が弱いと思う。
伊勢丹でかかとをハーフサイズ小さくしたと言われるAUDLEY3を履いてみたけれどくるぶしから外側が余る感じだった。クロケットアンドジョーンズのラストは僕にはあわないというのが結論で、見た目で言えばベルグレイヴが最高に格好良くて履きたいのだけれど、合わない靴はやっぱり買えない。

ボックスカーフと思われるアッパーはかなり上質な革を使っていて、みずみずしいもちもち感がする。チョットクリームを付けて磨くだけでものすごく奥深い光沢になる。ボックスカーフは手入れ次第でしっとりとした質感になるのが好きだ。特にオードリーは品を感じる光り方で、これはご祝儀系に合いそう。

シワの入り方もきれい。この入り方を見るに僕のボールジョイントあたりの甲上面と相性が良いのか、それとも釣り込みなど靴全体の作りで無理がないのか、自然に履いてここまできれいに入るケースも珍しい。(僕は一切ボールペンなどは使わない人なので)
きめ細かなしわが入り、ツリーを入れるときちんと伸びる。

クロケットアンドジョーンズのソールは滑りやすいことで有名なので最初は気合を入れて履いてみた。確かに滑りやすいのは事実。とはいえハンドグレードラインのソールに限って言えば他の靴に比べて際立って滑りやすいというわけでもない。やや固めなソールなので新しいうちは滑りやすいということはあるかもしれない。むしろペイントなどのソールの仕上げ方と、縁より中心をややボリュームを持たせる造形によるところが大きい気がする。新品時点で滑るのはアバディーンと同じ感じ。どちらかと言うと釘打ちの多いソフィスアンドソリッドのほうがはるかに滑る。

それにしてもオードリーは惚れぼれするくらい美しい靴。パリラストとも呼ばれる337ラストは、全体の長さと嫌みのないスクエア感、エッジをあまり効かせずやや丸みを帯びた造形と、その美しさはベルルッティみたいな技巧の評価が高い芸術品というわけではなく、シンプルな美しさ。冠婚葬祭ビジネスどのシーンでもまったく自然に溶け込むようなスタイリング。伝統的なスマートといったところ。似たようなコンセプトのシェットランドフォックスのエジンバラと比較すると、意外とシャープなつま先形状でありながら、コバが比較的ゆるいカーブで仕上げられていることとキャップからボールジョイントにかけてのエッジが目立たないため単独で見ると結構丸っこい印象になる。

これだけの靴がぴったり合う人は羨ましい。
でも逆に、オードリーが合う人は、シェットランドフォックスで言えばグラスゴーはともかく、アバディーンは入らないのではないだろうか。羽根開きまくりだし、甲に靴が食い込むのではないだろうか。
日本のブランドはかかとを小さく、甲を低く、口を小さく、幅もやや細目に仕上げることが多くなってきたので、そういった形に合わない人には向いているかも。

購入した当時はいまほどフィッティングへのこだわりというか理解もなくて、試着した時にやたら口が余るなぁと思って聞いてみたところ、「履きこんでくるうちに合いますよ」というアドバイスを信じて買ってみた。いま思えばこれだけ自分の足との物理的形状が違うのだから、変形してどうのという話ではなくて、こちらがよく太るか革が縮まない限りフィットすることはなさそう。

どんなにいい靴といわれても、結局は足に合うか合わないかの基準が最初にありきということを教えてもらった靴。また、自分には日本靴のほうが合う場合が多いという事実を否が応でも気づかされた靴。履く機会はあまりないけれど、この靴だけは手放すことができなくて手元に置いている。

2015年4月19日日曜日

SHETLANDFOX 524F EDINBURGH

Shoe*にコメントをいただく Life Style Image さんのブログでコレスポンド(コンビ)シューズが紹介されていたので、改めて自分の靴も見直してみた。

シェットランドフォックス30周年記念モデルとして売られていたエジンバラ。
僕は一部限定や入手しづらいものもあるけれど、これまで記事を書いている時点で入手可能なものを公開するようにしていた。次はAudleyを書き進めているのだけれど、今回はちょっと番外編として先にこの靴を取り上げてみたくなった。

コンビシューズ。クラシックな靴の配色パターンを変えることでガラッと印象が変わる。靴屋さんでもあまり売られていないので、よほど靴に興味があってPOするようなことがなければワードローブに無い靴。まわりをちょっと見渡してみても、クラッシックなデザインのコンビシューズを履いている人はあまり見かけない。

シェットランドフォックスもあくまで記念モデルだからこそ作ったモデルなんだろうなと。ふつうはPOでなければやらないような組み合わせのほうがアイコンとしての意味がありそうだし。
エジンバラのラストは気に入っていたし、コンビシューズを持っていなかったこともあり日比谷のシェットランドフォックスで購入。

524Fの濃い茶色の部分はイルチア社ラディカ、薄い部分は同じくイルチア社とされており、シェットランドフォックスの公式ブログでもパターンオーダー例でそのような紹介があるけれど、このベージュはそれほどムラ感が無い。あまりむら染めしていない革なのだろうか。
この組み合わせはかなり的を射ていて、おまけにデザインはパンチドキャップトウと、これまた絶妙。「パーフォレーションを施すことによりフォーマルになり過ぎない」という説明が公式ブログにあったけれど、まさにそんな感じ。クオーターブローグでも良かったくらい。
製造元と思われるビナセーコーのペルフェットPOでもこれとそっくりなカンピドリオのサンプルがあった。

シェットランドフォックスはこれまでもラディカを採用した靴のトウにはメダリオンを入れていない。3014SFしかり、502Fしかり。ラディカはそれ自体に表情があるので、トウに持ってきたときはメダリオンを入れないというのは一つの解だと思っている。歴史的な背景はおいておくと、いまはメダリオンは意匠だし、ムラ感による立体感という意匠がすでにあるところにメダリオンが入ると、せっかくの表情がピンぼけしてしまう。

さてこのコンビシューズ、色の組み合わせで受ける印象が結構変わるから面白い。
スポーツ観戦用(極めて限定的なシーンだな)として履かれたというスペクテイターシューズ(spectator:スポーツなどの観客)はトウを黒(茶色もある)、アッパーが白というパンダデザイン。でもこれ、合わせる洋服をすごく選ぶような組み合わせ。
出自をあまり考えないとすれば個人的にはコンビは黒白よりも、トウにはブラウンやワインのほうが合わせやすい気がする。黒白はコントラストがきつすぎて、靴だけが異常に目立ってしまう。これを収まりよく履きこなすには相当の実力が必要で、その自信がない僕はやっぱりブラウンベースが安心なわけです。

ベージュ部分は雨があたるとかなり色が変わる繊細な革。いまのところ小雨程度しか降られていないためなのか、乾くととくにシミになるわけでもなく元通りに回復している。ベージュなどの明るい色は濡れた時の変化が大きいので、雨が降らない予報が出ている日に履いたほうが良いかもしれない。

ソールも定番モデルとは異なりベージュのおとなしめなもの。至ってクラシック。こちらも雨の日履くと結構色が変わることと、路面から拾った汚れも目立って汚らしくなる。革靴だからという理由ではなくて、履いている時の色合いや表情を大切にするなら天気を気にしたほうが良い靴。

履き心地はエジンバラそのもの。最近の細め薄め系からすると気持ち甲が高くかかとが大き目なつくりではあるのだけれど、僕のように幅普通薄めの足には指への負担が少ないので休日履きとしては履きやすい。
全長も現在の標準よりは短めでこれまたジーンズからジャケットまで違和感無く履くことができる。ややスクエアで立体的な形状のため、どちらかというときれい目スタイルに合うのではないかな。
シェットランドフォックスはアーバインでコンビを売っている(3077SF)。これ、なかなか通好みのモデルな気がする。これぞ正統派スペクテイターシューズみたいな。アーバインは靴そのものの造形はとてもクラシックで、展開しているデザインもド定番。もう少し甲が低かったら...

イルチアのラディカの立体感と、何とも言えないベージュの質感なのか、この靴を履いているとかなりの確率で「いい靴ですね」と言われる。靴好きでなくても直感的にわかる素材の良さはさすが旧イルチアだなと。
最近は休みがなかなか取れないこともあって、休日用の革靴はW10BDJと3043SFだけで事足りてしまうのだけれど、よくよく見てみると、こういうコンビシューズってわくわくする靴だと思ったわけです。

ソフィスアンドソリッドでもコンビの新作が出ていますね。なかなかレギュラーモデルでは用意されないデザインなので、POする機会があったらコンビシューズも見なおしてみようと改めて思うのでした。

2015年4月14日火曜日

REGAL TOKYO

僕の最もお気に入りのお店、REGAL TOKYO。

銀座には数多くの靴屋があるけれど僕の一つの原点ともいえる。

僕はプロフィールの通り、リーガル系の靴を買うことが多い。なので必然的にREGAL TOKYOと日比谷のシェットランドフォックスに行くことが多いのだけれど、このREGAL TOKYOの接客の質は素晴らしいと思う。

僕はビスポークをしたことが無いし、ここの上得意さんと比べると取るに足らない金額しか使っていないと思うのだけれど、いつも満足できる接客を受ける。特に(最近見ないけど)斉藤さんの接客はスペシャルで、本当に勉強になることが多かった。

最近は日比谷にシェットランドフォックスができたため、REGAL TOKYOではオリジナルモデルが中心で、どちらかというとパターンオーダーやビスポーク中心の店舗。だからこそ、オリジナルモデルで少し遊びができるところも強みなのだろう。

リーガルと並ぶ日本の雄であるスコッチグレインの銀座店は、どうもいつもお客さんが多いためか(それだけ繁盛しているので良いのだが)、単に試着をするにも気が引ける。接客待ちのためのリストにも試着という欄がなくて(以前はそうだった。いまではどうなのだろう?)、もう買うのが前提みたいなところがあるし。よく言えば元気な、悪く言えば落ち着かない接客をしているスタッフが多い気もする。接客の方向性はREGAL TOKYOとは別物という感じ。(扱う商品のプライスが違うと言われればそうだが、既成で6万円以上、モノによっては10万円オーバーの靴を売る店である)

トレーディングポストは扱っている商品は結構好みだけれど、若い店員さんが多いせいか、なんとなく靴好きは伝わるけれど、ストイックさが無いような雰囲気があるし、WFGは常連さん向けのお店な気がしてしまい(特に銀座のお店)いつも外様感を感じてしまう。

というわけで、僕は結局REGAL TOKYOが好きなのだ。

並木通りにあった頃のREGAL TOKYOはオールデンが置いてあったりしてちょっとセレクトショップ風な印象を漂わせていた。2Fのビスポークや九分仕立てが置いてあるゾーンは見ていても飽きない感動があった。残念ながらいまはスペースが狭いためか既製の展開はごくごく一部で、他のブランドのものは置いていない。

そのリーガルトーキョーのオリジナルで、このところ立て続けに面白いモデルが出ている。

最近出た10周年記念(まだ10年なの?)モデルは、この10年の歴史と、この先10年見据えたモデルだと思う。Vフロント、パンチドキャップトウなどガチ定番から一歩だけ踏み出したラインナップもまた憎い。
素材もブラックはウェインハイムレダー、茶色はアノネイ、ソールは栃木レザーと気合の入ったモデル。以前もメルクスのボックスカーフを使ったモデルがあったりと、国産タンナー素材の採用があるのも嬉しい。

リーガルトーキョーは5、6万円クラスの靴としてはとても満足度が高い。
このモデルもかなりがっしりとした印象。ちょうどW10BDJのビジネスバージョンと言った感じ。
デザインはごくごくベーシックなパンチドキャップトウやVフロント。やっぱりこのデザイン、ビジネスシーンにマッチする。


シェットランドフォックスとは客層の違いを意識しているのか、全体的に大きめな作りに感じる。たいていはシェットランドフォックスよりハーフサイズ落としてちょうどいいか、それでも余る程度。くるぶしにややあたる感じもあるので、若者に多い細く華奢な足よりはけというよりは年配のゴツイ足向けか。

ただ、サイズを単純に落とすと寸詰まりになりやすく、指にきつさを感じる。01DRCDで緩い人だとハーフサイズ落としてもフィット感は感じられないが、指先がきつくなるはず。僕は10DRCDはかなり履きやすい靴だと思っていて、ハーフサイズ落としたこのモデルでは緩く感じるので、薄め・細めの足だとブカブカしそう。くるぶしのあたりも少し高いので、最近の細い靴では入りきらない足の人にはいいかも。


リーガルはブランドの育て方がイマイチに思える。
ビスポークまでやっているリーガルトーキョーの既製にはビジネスを意識しすぎた実用重視の靴は似合わない。そういう靴こそリーガルブランドで全国展開すればよいし、リーガルトーキョーまでわざわざくるお客さんがそういう靴を求めているとも思えない。「革底でも雨の日履けますけど何か?」「クラシックを理解したいなら当店ですね」くらいの雰囲気を感じたいといつも思う。
そういう意味では最近の「九分仕立てラストの既製靴」や「定番っぽいローファー」が立て続けに出てくるほうがドキドキ感が半端ない。できれば全部ほしい。

せっかくシェットランドフォックスという比較的攻めている既製ブランドを持っているのだから、超定番の安心感をベースに、時々驚くモデルを出すような感じだといいなと個人的には思ってしまう。ロイドのホワイトホールみたいな感じの代表モデルって無いですもん。(BTOもしくは九分がそれなのか?)
このあたり、リーガルのブランドマネージャーさんの手腕なのだろうけれど、実際、リーガルトーキョーは次の10年、何を目指すのでしょう。