2014年12月23日火曜日

W10BDJ - The Best Buy of 2014

僕がもし今年のベストバイを選ぶとしたら、悩む靴は多いけれど、やっぱりこれになる。


W10BDJ。
カントリー仕様の国産フルブローグ。

トリッカーズのカントリーラインに似ているけれど、日本の職人さんがあくまで既製靴の枠内で、本格的なカントリー仕様のフルブローグを作ったらここまでできる、を具現化した靴。

Offの日はかなりの割合でこのW10BDJを履いた。

軽く雨に降られることもあったけれど、今のところ目立ったシミもないし、国産キップのアッパーは比較的質が良いのか、革が硬くなるようなことも無い。


始めは自分の個体があたりなのかもしれないと思っていたけれど、ブログで紹介されているW10BDJはみんな結構きれいにしわが入っている。BOSの国産キップ(ブラック)のしわとは異なっていて、あまり目立たない。日本のタンナーでも市場があれば良い物を作ることができる実力があるのに、と思えてならない。

ちなみにこの靴、アッパーはBootBlackのニュートラルクリームだけでお手入れしている。

靴のコンセプトもあって、少し大きく緩い作りになっているものの、シェットランドフォックスあたりからハーフサイズ落とせば十分フィットする。

W10BDJはやっぱりこのタン色がいい。

カントリーテイストで気楽なoffに履くには明るい色のほうが肩の力が抜ける。経年による色合いの変化も楽しみだし。
僕は今のところニュートラルでお手入れをしているので、それほど変化がない。今後少しずつ汚れたり傷ついたりして深みが増していくのだろうか。

傷ついても気にしない。
雨に降られても気にしない。(お手入れはする)
ソールが減っても気にしない。(適度にリペアする)

そういう靴。


最初のうち、減りが早いと思っていたつま先も、返りがよくなったのか落ち着いてきた感じ。
ソールは適度にメンテナンスしているのでひび割れなども無い。


唯一気になるのは、2235NAのようなド定番ではないので、いつかは終売してしまうのではないかということ。
2235NAがリーガルの歴史を象徴するアイコンであるなら、W10BDJはリーガルの底力を示す靴で、こういう靴は細々とでも良いので長続きして欲しい。

先日、イギリスのウイスキーガイドブックでサントリーの山崎(シングルモルト・シェリーカスク2013)が世界最高のウイスキーに選ばれた。マッサンでピリピリしているサントリーにとってはこの上ない良いニュースだったと思う。

僕は靴と同様素人なりにウイスキーが好きで、しかもこちらもジャパニーズ派なのだけれど、日本のウイスキーは発祥の地イギリスのものとは決定的に違う良さがある。どちらがいい悪いではなくて、どちらもいい。方向性が違うだけ。トリッカーズのBurtonにはラフロイグが合うけれど、W10BDJにはサントリーオールドのほうがしっくりとくる、という感じ。(印象の話であってモルトドレッシングの話ではないです、念のため)

評価はある一定の基準でなされるわけで、その基準で評価が高ければ絶対的に良いというわけではない。逆に言えばある基準での評価が低くても、そのもの自体が完全に劣っているというわけでもない。とはいえ、ウイスキーという長い歴史があって世界的にマニアがいるカテゴリーでジャパニーズウイスキーが世界一の評価を受けたという事実は、歴史的なビハインドがあったとしても、確固たる信念を持って取り組みつづけることで、認められることもあるということを示していると思う。


W10BDJも、表面的なところだけを見ればイギリス靴のコピーのように思えてしまうけれど、見れば見るほど日本の靴作りが世界に通用出来るということを示していると感じる。こういう靴が長く続くことで、日本の靴がもっと世界で評価されるのでは無いだろうか。

来年はどんなモデルが出るのかな。01DRCDが気持ちシェイプされてソールが栃木レザーのハーフミッドソールなんてモデルが出たら気絶するかも。

今回ベタ褒めですけど、個人的に今年の The Best Shoes と思っている靴なので許してください。

2014年12月6日土曜日

革靴のサイズ選び

日本の靴屋さんの多くは、おそらく何も言わなければ緩めのサイズを勧める傾向がある。

それもそのはず、たいていの靴のクレームはサイズが大きいことよりも小さいものを買わされたという方が多いからだ。

ネットでも小さめの靴を返品したということが得意気に書かれていたりする。
まぁ、実際に店員さんがサイズミスをした可能性もあるのだけれど、まともなお店ならば試履して少しは歩くことを勧めるわけで、歩けないほどひどい靴を買う人はいないだろうから、やっぱり買った時点ではそれほど間違ったサイズではなかったのではないだろうかと思う。

革靴を何足も持っていて、自分なりにサイズ感がある人は緩いサイズを勧められても一つ下のサイズを試してみるのだから問題ない。
販売員としては革靴の経験があまりない人に正しいサイズを提示しても(そしてそういう靴は最初のうちは靴擦れしたりすることが往往にある)「小さい!」とクレームになるのが怖いので、とりあえず相手の素性がわからないうちは緩めから入るほうがリスクが少ない。

革靴のサイズ表記はスニーカーとは根本的に違うので、同じサイズということはありえない。ふつうはワンサイズ、場合によっては2サイズ近く小さいサイズになるはず。八重洲のリーガルファクトリーストアにもそんな説明ポスターがあった記憶がある。
男性は特に足が小さいということにコンプレックスを感じやすいので、特に女性と同時に買い物に来た人ほど実際よりも大きめを申告する。

ホント、結構百貨店で

女「あなたこんなに足小さかったのー!」
男「・・・でもなんかキツイよ」(傍からみるとどう見ても緩い)
店員「革靴はサイズ表記方法が違うので普段の靴より2つくらい小さくなることもありますよ」
女「それにしても24cmは無いわよねー」
男「・・・」

みたいなシーンが結構見られたりする。
(※JISの靴サイズでは本来cmは付きません)

百貨店だったり、リーガルシューズやスコッチグレインなどの革靴のサイズ感に慣れていない人が数多く来店する店だとほぼ緩めから入るのはこうした様々な理由からきているのではないかと思う。
お店の人の知識云々以前に、お客様が納得して買ってくれることと、クレーム防止が優先されていると。


靴によって履き慣れたあとサイズ感がどう変化するかは千差万別ではあるけれど、革靴を何足も持っている人は最初にキツ目を買っているのではなく、フィットがどう変化するかを想定したジャストサイズを買うことができる。だから、店員さんがはじめに緩めを持ってきても、小さいサイズもトライして自分に合うサイズを買う。

逆に革靴の経験があまりない人はスニーカーなどサイズ表記と感覚を元に、締め付けのきつくない靴を買う。スニーカーと革靴ではサイズの表示方法も異なるし、そもそもスニーカーは靴そのものの作りをみても5mmから1cmくらいはアジャストが効いてしまう。極端に言えば外羽根であれば足長23cmちょっとの人が26cmの靴を買っても何とか履けてしまう。また革靴の中でも1万円前後のものはアッパーは革靴でも、足入れする部分全体がスニーカーのようにふかふかしているため、それなりにサイズ選びが適当でも履けてしまう。

3万円を超える革靴にはこのようなフカフカする部分(≒アジャストされてしまう部分)がないため、サイズ選びはかなりシビアになるのだけれど、頭に染み付いたサイズの数字に影響されて大きめを買ってしまうひとも多い。おまけに従来のサイズより小さなサイズを買うことに抵抗を持つ人が多い。

売り手の立場にたてば、小さめとクレームされてしまうと返品として受け入れるしか無いが(そういうクレーマーはストレッチャーは認めない)、大きめなら中敷き入れたりタンパッドいれたりでごまかすこともできる。大きめの方を提案したほうが受け入れられ易いのであれば、何もお客様の意に反してまでサイズがあった靴を売る必要は無いわけで。

この辺り、靴好きしか訪れない某店であれば「サイズの合わない靴は売らない」で済むけれど、百貨店でそれをやったら大変なことになってしまう。クラッシックな革靴は、買う側の知識と経験も必要な商品でありながら、誰もが訪れることができる百貨店で売られているのだから売る人は大変だなと思う。

いっその事、足入れサイズ表記をやめて、根本的に違う体系にしてしまったほうが楽だろうに。
(国産でも米国式表記が増えているのは、格好の問題というより単純にcm比較しなくて良いメリットもあるのかなと)
リーガルのサイズはおそらく正確なのだろうけれど、多くの日本男子は自分の足を実寸より大きく思っている人が多い(スニーカーで育っているので)し、ジャストを買うと数字上は彼女と同じサイズになってしまうなんてこともある。そういうことに抵抗を持つ人が大きめサイズを買って結局履きにくい印象で終わってしまう人が多そう。
マーケティング的にどうなんでしょう、このサイズ表記。捨て寸込みサイズにするか、いっそ2くらい値を一律で増やしてしまったほうがみんな数字にとらわれなくて正しいフィッティングを受け入れてくれるんじゃないかと。業界ルールとかあるのでしょうか。

自分の足にあった靴であればキツ目に感じても靴ずれなどは意外と起こらないことがある。(僕の中ではREGAL W134やソフィスアンドソリッドS701がそうだった)
その一方で、購入時期にはあちこちマメが出来たけれど、いつの間にかちょうどいい感じになるものもある。(同じく僕の中ではRENDO R7702)
しばらくたっても微妙な違和感が残るものもある(シェットランドフォックスのインバネス)

まぁ、デザインや雰囲気の好みがあるので、必ずしもピッタリ合う靴ばかりを買うわけでもないため、新品の革靴には修行という過程があるということを覚悟しているわけで。


靴は足のむくむ夕方に買うのが良いという意見もある。
そういう傾向があるのは事実としても、むくむ時間帯や傾向は人によるとしか言い様がない。
僕は圧倒的に朝がいちばんむくみ、靴を履いているうちに足が小さくなるのかちょうど良い感じになる。夕方少しキツさを感じることがあるけれど、気になるだけかもしれないという程度。

一晩徹夜みたいな状態で、その間靴を脱いでいたらLGW3001なんて入る気がしないくらい足が大きくなる。(実際にはそれほど変わっていないのだろうけれど)
朝足を入れてみると恐ろしいほどにきつく、靴屋でこの状態だったら絶対に買わないというくらい。甲も、指先も、かかとまで痛くて10m歩くのも厳しい。

ところが(徹夜明けなので他の靴もなく)諦めて履き続けていると、なぜか午後にはいつものサイズ感になりちょうど良くなる。まるで足が縮んだかのよう。
夕方も気にならないことが多いので、僕の傾向はお昼すぎから夜まではあまり変化がないのだと思う。

もし僕と同じような傾向を持つ人が日曜日の夕方にぴったり目の靴を買ったとしたら、翌朝相当きつく感じるだろう。新品の靴なら靴擦れもするだろうから、そうなると「しまった!小さい靴を勧められた!」となって、家から10mあたりで引き返して普段の緩い靴に履き替えて、買った靴は返品クレームと。
もうちょっと我慢すれば履きやすい靴になるかもしれないのに...

僕の(数は少ないが)経験則によると、結局靴が大きすぎて履かなくなったものはあるけれど、小さすぎて履けなくなった靴はほとんど無い。
小さめに感じるものは薄手の靴下にしたり、雨の日に履いたりしている間になんとか履けるようになる。


というわけで僕はいつも次のことを意識して靴を買っている

・1日のライフスタイルを考慮して歩くことが多い時間帯に靴を買う

結局どこかの時間帯で足がむくむのだから、きつい時間や緩い時間が出てくる。それならいちばん足を意識する時間帯にジャストなものがいいのではないだろうか。休日に靴を買う場合、出来る限り歩いてから靴を買うようにしている。歩くと血流が良くなるので少し足が小さくなることもある。その時に緩かったらかえって疲れる靴になってしまうのではないだろうか。いちばん大きい時だけを意識して買ってしまったらそれ以外の時間はずっと緩いから、必ずしもむくむ時間がベストではないと思っている。

・店頭できちんと紐を結び、きつすぎないなら問題なし

少なくとも買うときに試着して履けて歩けた靴なら履けないほど小さいということはないはず。当たるところが全くない靴なんて無いのだから、店頭で歩けないほどきついのでなければいずれは履ける靴になる。このため、お店には申し訳ないと思いつつ、少なくとも5~10分は履いたままで、あまりしわを付けないようにして歩くようにしている。(大切な商品ですので)
歩いたり座ったりする間、どこが当たるか、どこが緩いかを意識する。
特にグッドイヤーウェルテッドの靴であれば、中底が多かれ少なかれ多少は沈むので靴は緩くなる方向にサイズが変わるため、当たる場所によって買うべきかどうかの最終決定になることも多い。

・必ずハーフサイズ違いは試してみる

試着時点でピッタリ、もしくは少しきついと感じたらハーフサイズ上を、気持ち緩いかなと感じたらハーフサイズ小さめを試す。ちょうどいいと思ったときは、ハーフサイズ上下を試す。靴屋さんによっては面倒なのか自己申告のワンサイズしか持ってこないことが多いけれど、遠慮せずに試履する。こちらは何十年も履き続ける覚悟なのだから真剣勝負。ただし、何種類の靴を複数サイズ履くみたいなことはしないで、迷っても2種類くらいまでにしている。

・購入後「小さかった」と思ってもしばらく履いてみる

革靴は購入時点では半完成品。ある程度足に馴染むまでは靴ずれするものと諦める。むくむ時間帯もあるので、きつく感じる瞬間があるのは当たり前。逆に言えばきつく感じる時が無いならその靴はゆるすぎる。
どうしてもキツかったらストレッチャーで伸ばしたり、土砂降りの中履いてみたりするとサイズ感が変わるかもしれない(捨てるよりはいいですし)


エラそうに書いている僕も、靴選びではかなり失敗してきた。
若いころは大きめを買ってしまう傾向があって、永い間履こうと思って買った靴が結局永い間履かずに手元を去っていったことが多かった。同じモデルのサイズ違いを買い直したこともある。
逆に、一時期は「歩けないくらいきつい靴がいずれ極上のフィットになる」という本に書かれていたことを字面だけ真に受けてキツキツの靴を買って外回りの仕事に影響をきたしたことも。こういう情報はある意味真実ではあるけれど、読み手の背景によってはとんでもないアドバイスになってしまうこともある。

生涯で何足も革靴を買ってきたのに、未だに靴を買う時は「本当にこのサイズで良いのか?」と悩んでしまう。購入時点で「緩い」という感じがするものは極力避けて、どちらかと言えばほんの少しだけきついという靴を買うようにしている。ほしい靴を売っているお店で応対してくれた店員さんがどうみても緩い靴を履いていたりする時は特に。

靴は服と違って、サイズ違いが如実に体にダメージを与える。おまけに服よりも耐用年数が長いから、本当はもっとシューフィッターのような専門家にみてもらいたい。残念ながらほしい靴が売っている売場にベテランのシューフィッターがいつもいるわけではないし、結局履いた感じは自分が一番わかるということで最後は自分の勘を信じるしか無いのかな。