2014年3月1日土曜日

Perfetto PALATINO PT1X

最近はシェットランドフォックスばかり履いているので登板機会が減ってしまったのだけれど、思ったよりLGW3001へのアクセスが多い(全記事の中で前月3位)だったので気を良くしてペルフェットのパラティーノ(PALATINO)。
ペルフェットの評判通りのイメージなキャップトウ。

Palatinoとはローマ発祥の地と言われるパラティーノの丘から取っているのかな。レースアップシューズの基本形と言えるキャプトウにこの名前をつけていることからもイタリアンテイストを志向していることがよく分かる。

ロングノーズ、ボールジョイントからインステップまわりの甲の低さ、やや丸みのあるスクエアなチゼルトウとかなり攻めているデザイン。サイドのエッジは初めて見た時「これは箱か!」とツッコミを入れたくなるくらいの絶壁で、同じようにエッジが効いているシェットランドフォックスのアバディーンの上をいく。(ように見える)
73チャーチにこだわりがある人とか、ロイドのホワイトホールが好きな人が見たら視界から外すレベル。

この手のややロングチゼルトウは、一歩間違えると靴だけが主張して、ややもすると安っぽいトンガリ靴になってしまいがちだけれど、パラティーノはそのギリギリのラインを守っているように見える。これがまた細身のスーツによく似合う。

ブランド名の通り、イタリア製グッドイヤーの靴と見た目の方向性が似ていると思う時がある。ストール・マンテラッシみたいな。(言い過ぎ?)
ペルフェットを作っているビナセーコーは海外進出も頑張っているようで、そのフィードバックがあるのか国産靴なのに色気が強い。
フィドルバック、ヒドゥンチャネル仕上げ、凝ったステイン仕上げ、つま先の釘打ちと僕のような初級レベルの靴マニアを喜ばせる仕掛けが随所に見られる。アッパーにイルチア社ラディカを使ったモデルはソールは赤系、それ以外のモデルは茶色系。ライニングもボルドーで、ロゴも格好いい。

最近では「原点回帰」みたいな風潮でショートノーズのラウンドトウが復権しつつあるけれど、そんなことお構いなしにイタ的エレガントを目指す靴。
このペルフェット、LGW3001ではソールの仕上げがイマイチなのに、パラティーノは同じブランドとは思えないくらいとても綺麗に仕上がっている。というか、ここまで凝っているソールはあまり見かけない。土踏まずからかかとにかけての造形はLGW3001に似ているけれど、パラティーノのほうがソール前半分が無駄に凝っている。パラティーノやカンピドリオなど、ローマの丘シリーズ(勝手に命名)はソールへのこだわりが半端ない。
(買った時にとっておいた写真。いまは少しふやけてしまいちょっとみすぼらしいので写真は省略)

足入れした感じでは、冒頭二枚目の写真でも見てわかるくらいボールジョイントのあたりがかなり低めで、これはアバディーンに似ている。インステップガースが低めなので、全体的に足が薄い人向け。僕はシェットランドフォックスのグラスゴーだとほぼ羽根が閉じるけど、パラティーノは1cmくらい開く。甲の高い人だと羽根が相当開くか、下手をすると入らないのではないかな。
トウに向けての造形はアバディーンと似ている。ロングノーズであるけれど必ずしもギリシア型の足向けというわけでもなく、エジプト型の僕が履いても違和感があまりない。ボールガースが小さめなので、ここでしっかり抑えられていれば指先の形はあまり関係ないかもしれない。
外側(小指側)は見た目ほどタイトではなく、こちらもまた捨て寸が多いのでLGW3001よりゆとりがある。やっぱり足長が長い左足のほうが少し窮屈なのだけれど、タコが出来る程でもないのでたぶんジャストフィットなのだろう。

土踏まずは盛り上がりを感じるもののLGW3001ほどではない。(製造誤差かも知れない)
かかと周りはコンパクト。カップも少しばかり小さめなのか食いつく感じがする。ただインステップの底面をやや広く取っているのか「細い」と言われるラストでかかとが小さい靴にありがちな履き口が笑うことが無い。これはペルフェット全体的に言えることで、単純に「細い」ラストではない感じ。このインステップの造形はアバディーンともっとも異なるところに思える。(僕はアバディーンだと内羽根式でちょっと、外羽根式だとわりと履口が笑う)
ちなみにかかとはアバディーンより食いつきがよく、ヒールカップの形状が個人的にドンピシャ感。LGW3001だとかかと外側にアタリを感じるけれど、パラティーノにはそれがない。

とてもメリハリが効いたラストで、ボールジョイントとかかとの三点で足の位置をしっかりと決めて、甲で足に一体化させる作り。いままで履いた靴の中でもトップを争う出来栄え。(最大のライバルはシェットランドフォックスのケンジントン。同じビナセーコー製ですね)

アッパーはもう手に入らないかもしれないイルチア社ラディカ。艷やかで色気のある感じがこれまたこの靴のデザインに良く合っている。

ラディカについては過去にも書いたけれど、メンテナンスを繰り返すうちに何とも言えない艶が出てくる。表面が艶やかなブラックなのに立体的に感じるのが特徴のアッパー。純粋な「深みのあるブラック」ではないので好みが分かれそう。
「水墨画のよう」と言われるその風合いはニュートラルで手入れをし続けると赤みが、ブラックを使うと御影石のような感じになる。手入れ方法よりも方針で悩む革。僕は他のラディカ靴よりはブラックの頻度を上げている。黒くなりすぎた時にニュートラルで少し落とすような感じ。クリームはもはや定番とも言えるサフィールノワールクレム1925。

サイズ感はアメリカサイズと言うよりはイギリスサイズで考えたほうが良いところもケンジントンと似ている。アバディーンよりハーフサイズ下げると近いかも。

シューツリーは当初サルトレカミエSR200を使っていたが正直あまり合っていない気がする。どうしてもボールジョイント内側が足りない。このサルトレカミエSR200、買って1ヶ月もしないうちにバネが壊れた(よほど力を掛けてギシギシいって縮むみたいな)。ハズレを踏んでしまったのだろうけど、国産ブランドでも海外製造は管理がしっかりされていないとやっぱり不良品出るよなぁ。「安かろう悪かろう」とまではいかないにしても「安かろうあんまり良く無かろう」といったところか。ノウハウの蓄積とともにクオリティの向上に期待します。いまのところサルトレカミエならSR300一択か。この靴にはいまはたまたま余っていた同じサルトレカミエのSR100をつかっている。SR200の時よりバネ縮んでいるので、おそらく先頭が少し詰まっているのだろう。その分ボールジョイント周りの革が伸びてシワが目立ちにくくなっている。

LGW3001の時も書いたように、ペルフェットはいい靴なのだけれど、入手が困難なことが問題。
僕はたまたま東京に住んでいるので、イセタンメンズでもWFGでもクインクラシコでも行けば試着もできるし買うこともできる。丸の内や有楽町、神宮前に行ける人なら通販じゃなくて店頭での試し履きがオススメ。靴は三次元の構造なのに長さ以外で選択できる余地がないので、買うべきか否かのポイントとなる甲の締め付け具合や指先の自由度、かかとのつかみ具合は履いてみるまでわからない。
よく「日本人の足型」なんて平気でいう人がいるが、そう言う人が着ているスーツは身長だけではなくドロップも選んだのではないだろうか。「日本人の体型」なんて言って、スーツのドロップやウエストサイズが1種類になることはないんだし。
靴の場合はウイズ設定が1種類しか無いことが多く。そのラストが「合うか、合わないか」しか選択基準がなくて、いくら気に入ったデザインでも合わなければ諦めるしかない。僕はクロケットアンドジョーンズのオードリーやベルグレイヴは最高に格好良い靴だと思うけれど、337ラストだと履口が結構余る。国産ではシェットランドフォックスのアーバインはデザインど真ん中だけど、やっぱり合わない(これはサイズを上手く選べばいけるかもしれない)

ペルフェットは通販でも買えるので、一度自分に合うサイズがわかれば同じラストのものなら買い増しは試着なしでもできる。ただやっぱりラストが違う新しいデザインを通販で買うのは勇気がいる。同じペルフェットでもレギュラーモデルとクインクラシコのダブルネームとでは全くラストが違うので同サイズでも参考にならない。レギュラーモデルどうしでも甲のフィット感は違うので試し履き無しに買うのは勇気がいる。シェットランドフォックスでもケンジントンとアバディーンとアーバインとでは同サイズでも全く参考にならないのと同じ。(これは工場が違うので当然と思うけど、ラストはリーガルが作っているんだろうし)

そしてもうひとつ。
この靴は格好良い靴なのでローテーションに入れにくい。
ビスポークチックな攻めたデザインでおまけに艷やかなラディカといかにもな靴なので、真面目なビジネスシーンよりも合コンとかパーティに似合いそう。(いまとなっては縁のないシチュエーションだ...)

ビジネスユースの観点では、同じラディカならシェットランドフォックスの501Fのほうがノーズが短く嫌味がないし、逆に同じロングノーズなら3055SFのほうがアッパーの主張が控えめで使いやすい(考えすぎ?)。
パラティーノは同じモデルで革違い(たぶんデュプイかウエインハイムレダー)があるので、そっちのほうがビジネスシーンでは使いやすいかも。

この靴はビジネスシューズというよりはドレスシューズ。やっぱり場を選ぶよなぁ...

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