2013年6月30日日曜日

REGAL 01DRCD

早いものでもう2013年も半分終わってしまった。2013年前半に買った靴の中でのベストはリーガルの01DRCDだと思う。

リーガルブランドで販売する日本製の靴は垢抜けないというか、革底の多くはハッキリ言えば野暮ったいものが多くて(ファンのかたスミマセン)、ラストもかかとがガバガバだったり甲がゆるゆるだったりで、なかなかこれといったものに巡り合わないと思っていたけれど、かなり気になるモデルが出ていた。

2013年の新モデル、01DRCD。

アッパーはアノネイのベガノカーフ。土踏まずをこれまでのリーガルとは似ても似つかないほど絞ったややロングノーズなラストと、ありがちなとんがり靴ではない丸めのつま先。そして実は靴作りの実力はかなり高いのではないかと言われている Made in Japan。

出張の帰りに靴紐を買おうとして寄った店頭で気になり、物は試しに足入れしてみたところ、その時はなんとまぁぴったり感がしたので、そのまま購入してしまった。35,700円(2013年6月現在、税込)。

これまで最もバリューな靴はシェットランドフォックスのインバネスだと思っていたけれど、それと甲乙つけがたい。ベガノカーフはさすがにガラス仕上げとは雲泥の差があるし、絞った土踏まずがちょうどいい。革にこだわってスコッチグレイン(革の種類じゃなくて、ヒロカワ製靴のほう)を買っていた層にも受けるのではないだろうか。(ちょうどかかとだけゴムってのもスコッチグレインに似ている)

デザインはチャーチのように無骨なわけでもなく、クロケットアンドジョーンズの337ラストのようにヨーロピアンテイストを感じるわけでもなく、極めて和風。ゼロから作ったと言うよりは2235NAを元にクロケットやグリーンのような繊細な靴を目指していったら途中経過でこうなりました、という感じ。シェットランドフォックスのインバネスに近い。
左がインバネス(サイズ6)、右が01DRCD(サイズ24)。トウの形が似ている。01DRCDのほうがやや大きめでやっぱりリーガルっぽい。

フィッティングはシェットランドフォックスのインバネスに比べると甲が広めだが、かかとはBTOラストより小さめ、インバネスより少し大きめといったところ。つま先は結構余裕がある。インバネスが合う人は、履口周りが少し余るかも。若い人向けと言うよりは、少し年齢層高めの40代後半から50代くらいがメインターゲット?

これが国産キップのBTOラストモデルよりも低い価格で売られていることが驚き。
土踏まずの絞り込み度合いから見るに、それなりに技術のいる作業が発生していそうなのに。
ライニングの革の使い方と、かかとのゴムヒールあたりにちょっとコストダウン的な要素を感じるけれど、ぱっと見それくらい。中底のコルクとかシャンクとか、何か目に見えにくい部分が違うのだろうか。

ステッチは細かくて、とても繊細なイメージ。

あと、ライニングのロゴが小さめなのも良いかも。BTOラストモデルは黒地にREGALの文字が金色ででかでかと、まったくもって品がなく安っぽい。そもそもロゴが文字だけなのに大きくしたものだからなんか安物によくあるロゴの主張みたい。あれを見ると買う気が失せる。
ベガノカーフのおかげなのかシワの入り方など、靴全体の見た目で言えば、BTOラストモデルより格段に良さげ。

ちなみに、靴全体の繊細さという観点でベガノがいいのであって、丈夫さ、シミになりにくさでは国産キップのほうがはるかに軍配が上がる。ベガノはちょっと水滴当たるとシミになる(メンテで回復するが)など取り扱いに気を使う。デイリーユースでガシガシ履くようなパターンだとBTOラストモデルほうが使い勝手よいかも。ただリーガルのキップは品質のばらつきが大きくて、プレーントウのW134はそれほどシワが入らないのに対して、ストレートチップのW131はかなり大味なシワが入るなど、タンナーの品質管理が悪いのか、リーガルの仕入れが大雑把なのかわからないところが、いまひとつこのBTOラストモデルを買い増ししないひとつの理由にもなっている。
W131(多分4年経過くらい)のアッパー。かなり大きな皺が入っている。
ただ、BTOの作りはしっかりしているのは間違いなく感じるし、国産キップは履きこむと意外と柔らかくなるので、履きやすさという点では劣らない。

これのセミブローグ(クォーターブローグ)の02DRCDも欲しいんだけど、少しインステップ部分が緩いのよね。インバネスでこのデザインあれば間違い無く買いなのに。
フルブローグの03DRCDはラウンドトウのオーソドックスなデザインで、タンニン鞣しのベガノの良さが最も表現される靴だとおもうので、これも欲しい。

まっとうな靴を戦略的なプライスで出してきたところに、最近のリーガルの本気度を感じる。
社会人デビューで初めて革靴を買うのであれば、10万円払ってグリーン買うより、このモデルをデザイン違いで3足揃えてローテーションさせたほうがはるかに印象いいだろうな。ストレートチップばっかり買っても良さそう。

サイズ24の靴にシューツリーはREGAL TOKYOオリジナルネジ式のサイズ38を入れている(たまたまこのツリーが余っていた)。この靴は少し幅がある感じなので、いつものディプロマットヨーロピアンよりもこちらのほうがあっている感じ。

メンテナンスはお決まりのサフィールノワールニュートラルとブラックを使っている。2回くらいニュートラルを使った後、ブラックを入れるみたいな。ニュートラルはブラックよりもテカリが少なめな気がする。気のせいかもしれないけれど。
購入して何度かのメンテナンスでワリとすぐに艶が出る。磨いていてなかなか楽しいアッパー。
革のソールもどちらかと言うと減りにくく、シミになることをあまり気にしなければ実用度は高い。

靴の多くは直営店のリーガルシューズやリーガルトーキョーで買うことが多いのだけれど、ブランドに抵抗がない人であれば今回みたいな掘り出し物が時々ある。リーガルシューズ専売モデルではないので百貨店でも売っている。こういうの定番にすれば良いのになと。

だいたい3万円から4万円を出せば、海外の5万円から7万円くらいの靴と同程度のクオリティのものが手に入る。3足買う値段で4、5足買えるので、ラストが足に合えば国産も悪く無いと思う。
リーガルの店頭で販売された靴であれば全国のリーガルシューズで修理を受け付けてくれるのもありがたい。イギリス製モデルとして売り出していたアルフレッド・サージェント製の靴でも修理できたのだが、リーガルの工場にはラストがあるのだろうか?ホームページには販売した全モデルのラストがあると書かれているけれど、これまんまサージェントだし。(内側にリーガルのモデル名と併記して99EXラストの表記がある。表記の仕方もサージェントそのもの)
修理代はちょっと高いけどね(オールソールで1.5~2万円くらい。修理後は紐を交換した上でピカピカに磨いて帰ってくる)

価格は感覚的なものなので、安い高いを議論する意味はあまりないと思うのだけれど、シューツリー込みで4万円程度で買えるというのはありがたい。アンダー4万円の靴としてリーガルはシェットランドフォックスのアスコット(国産キップ、たぶんBTOモデルと一緒)、リーガルトーキョーのW931/935(イタリア製カーフと書いてあるが詳細不明)を展開している中で革の質感はピカイチ。

極めてマジメなモデルで、ぜひこういうコンセプトの靴を定番化してほしいと本気で思う。よくいろんな本や雑誌で「社会人がまず揃えるべき靴」っていう項目があると、1.プレーントウ、2.ストレートチップ、なんて紹介がされているのだから、ぜひこのシリーズでシンプルな外羽根プレーントウを作って欲しいな、って。


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01DRCDにはクレム1925が合っているような気がします。
購入当初はニュートラル(無色)を使っていましたが、最近はブラックを薄塗りしています。


2013年6月16日日曜日

革靴のお手入れ

革靴のお手入れについて自己流の方法を書いてみようと思う。

革靴のお手入れ方法はいろいろな流儀があるようで、ステインリムーバーはを毎回使う人がいる一方で絶対使わない人がいたり、ニュートラルを中心に使う人もいれば黒い靴には必ずブラックを入れるという人もいる。ポリッシュする人もいればそんなの要らないという人もいたりで、いったいどれが正解なのかわからない。

科学的に検証すれば正解はあるのかもしれないが、そもそも革靴のメンテナンスなんて趣味みたいなものだし、情緒的な部分もあるので、ひとつに縛られないから面白い。

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よく革靴のお手入れの話で、「クリームの重ね塗りは厚化粧と同じ」という件があるが、本当にそうなのだろうか、と思う。

ワックスについては確かにヒビも割れるのだろうけど、乳化性のクリームを塗り続けることが「厚化粧」と同じとは到底思えない。(塗る量もぜんぜん違う)

化粧をしている女性は、化粧が終わったあと豚毛のブラシで顔をブラッシングしているのかと思うし、毎日馬毛のブラシで汚れを払っているわけでもないだろうし、雨風に一日中晒されることも無いだろうし条件が違いすぎる。そもそも新陳代謝のある人間の肌にする化粧と、なめされた革に塗りこむクリームを同列に扱うのはどうかと思う。

革靴の置かれている環境を素人的に考えると、まずクリームを塗りこんだあとは乾燥する一方だろうし、クリームの一部は乾燥して固化してブラッシングで取り除かれていくだろうし、雨に降られれば油分も抜けてしまうだろう。革が呼吸(というか人間の汗を排出)する過程でもいくらか油分は抜けるだろうから、乳化性クリームオンリーでメンテナンスしている僕にとってはステインリムーバーはやサドルソープの必要性はあまり感じない。

というわけで、わりとしっかりやるときは次のようにメンテナンスしている。


1. まず豚毛のブラシでていねいにブラッシング

お手入れの本や他の人のブログをみてみると、馬毛を使う人が多いのだけれど、手持ちに豚毛しか無いのでそのまま使っている。
まぁ、表面についているホコリやちょっとした汚れが落ちれば十分なので。
靴底やコバのあたりもそれ専用に用意したブラシで汚れを落としておく。特に雨に降られたあとなどはコバの周りに結構ゴミが溜まっているのでていねいに。

2.キッチンペーパーで軽くクリームを取る

キッチンペーパーかティッシュで表面のクリームをある程度落とす。

3. ぬるま湯で固く絞った綿布で全体を拭う

水より余計な油分を落としそうなので。
あまり熱いと革に悪そうなので(根拠なし)、人肌くらいに給湯器の温度設定をしてそれで固く絞った布を使う。布は使い古しのTシャツがいちばんいい。これで全体をあまり力を入れずに軽く拭う。表面についた汚れをある程度落とすのが目的。

4. デリケートクリームを塗る

5回に1回くらいはM.モゥブレイのデリケートクリームをごくごく軽めに塗る。このクリームは伸ばすというより表面を覆うような感じで塗っていく。デリケートクリームは革に吸い込まれるような感じで吸収されるので、気をつけないと塗りすぎてしまう。

5. 気持ち乾かす

デリケートクリームはかなり水っぽいので、気持ち乾燥させる。
風通しの良い場所に置いて30分くらい放っておく。

6. 乳化性クリーム

僕は主にサフィールノワールを使っているので、正確には油性クリームなのだが、これは水が入った乳化性クリームと同じ使い方ができると言われている。このクリーム塗る前にデリケートクリームを入れていることもあり、水分あるなしは気にしない。
サフィールノワールには有機溶剤が含まれているので、ある程度の汚れは取れるのだろうと勝手に思い込んでいる。
塗る際はほぼ綿布で塗りこむ。ペネトレイトブラシよりこっちのほうが塗っている感じがするので。ただコバ周りなどはどうしても布が入らないし、無理に入れるとクリームがダマになって残りそうなので、思いっきり少量をブラシにつけて入れている。

7. コバクレヨン

ブートブラックのコバクレヨンでコバの色を補充。ほとんど変わった気がしない。
気が向いたときはHerringで靴を買った時におまけでついていたワックスを使うのだけれど、あまり変わる感じもしないので、ほとんど気分でメンテナンス。
ただ、コバ周りはメンテナンスをするのとしないのとでは靴の全体的な印象が変わると思う。

7. ブラッシング

コバを塗っている間にアッパー部分はある程度馴染むだろうから、ここでいったんブラッシング。あまり気合を入れずにサッサと磨く。どちらかと言うとクリームがシワの間で固まらないようにするためにやっているという感じ。

8. ソール

ソールのメンテナンスは雨に降られたあと以外は本当に気まぐれでしか塗っていない。
意味があるのかよくわからないが、なぜかソールクリームを塗ると革底の欠点がカバーされるような気がするのが不思議だ。

9. 全体をひたすら磨き上げる。

ブラッシングさえしておけば余計なクリームはとれていると思うので、しばらくほったらかしにしておく。なので、磨くのは数時間後~翌日なんてことが多い。まずはひたすらブラッシング。片足2、3分ほどブラッシングするのでかなり長めにやっていると思う。
それが終わったら余計なクリームを落とすということと、光らせるという目的でひたすら磨く。
といっても両足で1、2分だけど...(マジメに測ると1分って意外と長い)


いまのところこれがメンテナンス。だいたい10分から15分といったところだろうか。
靴のローテーションの中でやっているので、それほど時間をとられるわけでもないし、むしろもっと磨きたいくらいなので、個人的には負担とは思っていない。
まぁ、これも趣味のひとつなんですが。

2013年6月15日土曜日

Shetland Fox 501F EDINBURGH

今回は僕の持っている靴について書いてみようと思う。

記念すべき1回目なので、フラッグシップを取り上げるのが良いかなとも思いつつ、ネットにあまり情報のない靴にしてみようと。

シェットランドフォックスの伊勢丹別注エジンバラ(Edinburgh)。

公式にはエジンバラは廃盤になってしまったけれど、新宿のイセタンメンズでイルチア社ラディカをアッパーに使った別注品がいま(2013年5月現在)でも販売されている。

イセタンメンズで販売されているエジンバラは、内羽根ストレートチップ(キャップトウ)の501F、外羽根セミブローグ502F、モンクストラップ503Fの3つ、それぞれブラックとブラウンがある。この別注モデルがイルチアのためか、イセタンメンズではフラッグシップのケンジントンの取り扱いは無い。
過去に伊勢丹の店員さんに聞いた話では、伊勢丹別注といえども新宿にあるイセタンメンズでしか手に入らないらしい。立川の伊勢丹ではやっぱり売っていなかった。

僕が所有しているのは501Fのブラック。
過去に存在した定番品はアノネイ社カラグレインカーフの3041SFで、これはこれでありなのだけれど、スムーズレザーが欲しかったということと、イルチアのなんとも言えない感じが良かったので伊勢丹別注品を購入。

スクエアトウのいたってオーソドックスなストレートチップ。今時のロングノーズに見慣れると、少し寸胴な感じさえする程度で、見た目コンパクトな印象。

2ちゃんねるのシェットランドフォックススレでは
●エジンバラ・・・甲低め・つま先長く細め・踵普通(木型後半分はナイツブリッジと同じ) \44,100(30??SF/伊フラスキーニ社スマッシュ) *2010年6月ディスコン
とあるのだけれど、つま先はそれほど細くないし、あまり長くない。チャーチのコンサルやクロケットアンドジョーンズのオードリーより短く、いまどきラストで言えば標準というかむしろ短めいったところ。
あまり写真が良くないけれど、左からBTOラストのW131、エジンバラ、グラスゴー。いちおうかかと側を揃えて撮影。サイズはすべて6。
標準的なノーズと思われるW131より若干短いくらいで、グラスゴーよりははっきりと短くトウ先のシェイプもあまり尖っていない。(広めのソフトスクエア)
こうして並べてみるとBTOモデルに似ている気もする。

甲については確かに低めだが、最近のグラスゴーやインバネスと比べると二の甲あたりはやや高め。

エジンバラはAllAboutで飯野さんが絶賛しているシェイプなのだが、ロングノーズが流行るご時世でディスコンになってしまったようだ。とはいえいまでも復活を望む声があるらしい。いまはイセタンメンズでのみ売っている伊勢丹別注モデルと、日比谷にあるシェットランドフォックスで買える30周年記念モデルのみとなっている。

ちなみにこの30周年モデル、デザインはむちゃくちゃ好みなパンチドキャップトウ。これでアノネイのボカルーもしくはベガノだったら即買いだっただけに、カラグレインなのは残念。未だに買おうか迷うモデルではあるけれど。

リーガルはブランド作りがヘタだ。満を持して復活したシェットランドフォックスの定番品をものの数年で廃盤にしたり新しい商品を出したり。商品によってはチャーチのカスタムグレードや、クロケットアンドジョーンズのメインラインあたりと十分勝負できる(場合によっては勝てる)ポテンシャルを持っていながら、安心して定番を買い続けられないというのはどうしたものか。2、3年はいて足に馴染んだ頃、もう一つ追加で欲しいと思ったら廃盤になっていて買えない。チャレンジングなことはリーガルブランドでやってもらって、10年以上大切にしたい靴であるシェットランドフォックスは10年先を見据えた商品開発と展開をして欲しいと思う。

閑話休題。

このエジンバラ、結構お気に入り。
土踏まずのサポート感はしっかりしているし、グラスゴーに比べて大きめといわれるかかとは、確かに食いつきが弱いのだけれど、BTOモデルを始めとしたリーガルブランドの靴よりは小ぶりで、またシェットランドフォックスお得意のヒールカップは収まりが良くて直立した時にものすごく気持ちがいい。
指周りはかなりゆったり。全体的に大きめなのか、甲が高いので薄めの足だと少し緩いかな。

イルチアのラディカカーフは新品時点ではクリームを入れると少しテカリが強くて、ムラも多めでややもすると白っぽいカビが生えているのかと思うような見た目だなと思っていたけれど、しばらく履きこんで手入れをしていくとなんとも言えない立体的な艶が出てくる。この艶やかな感じは全面的ににぶく光るボカルーとは対照的だが、これはこれでありだなと。

この売りのひとつであるムラをある程度維持するため、お手入れの基本はニュートラルでやっているが、ブラックの場合はムラが白黒なので、少しムラ感を抑えるために、4、5回に1回はブラックを使っている。

ふだんはブラッシングのみ、だいたい月に1度くらい(この間2、3回履く)クリームを入れている。ステインリムーバーは使わずに、ていねいにブラッシングをした後、固く絞った綿布で軽く拭って、サフィールノワールを布で塗りこみ、またていねいにブラッシングといういつもの流れ。ニュートラルのクリームを使うと布が結構黒くなる。前回塗ったブラックが落ちているわけで、このため時々ブラックを入れて全体的な補正をしている(つもり)。

ちなみに、リーガルの公式通販サイトではクリームはブラックを使わずニュートラルを使えと書いてあるのだけれど、伊勢丹の店員さんはブラックで手入れをしたほうが良いとのことだった。たまにブラックでメンテナンスしているとわかるのだけれど、黒を入れた直後はあまりムラ感がなくなる(特に電球の明かりのような所では)。ムラ感を強く残したいのであればブラックを使わなければいいのだろうけれど、個人的にはよく見るとムラあるかもねーというくらいが好きなので。

気合入れてメンテナンスをするとかなり光り、その光り方も奥行きがある。
左がエジンバラ、右がグラスゴー。

メンテナンスはサフィールノワールのみでワックスは使っていない。
グラスゴー(チプリア)が特定の場所では強く光り、バラバラに拡散しているのに対して、エジンバラ(ラディカ)は光が柔らかに広がっている。しかも光り方に奥行きが感じられる。
ちなみに、チプリアはトウなど芯が入って固めなところがかなりわかりやすく光る。ロングノーズなデザインでもあり、目立つ靴にはしやすいとおもわれる。

ちなみに、リーガルの01DR(アノネイ社ベガノ)とも比較。

うーん、アノネイのカーフの光り方はやっぱり好みだわ。更に奥行きのある光り方をしている。肌理(きめ)の細かさが伝わるだろうか。こちらはまだ手入れの回数も数回なので、もう少し経つと光り方は変わるかもしれない。ただ、光かたの方向性はやっぱり違っていて、冠婚葬祭で言うところの「葬」にはアノネイのほうが良いかも。

写真でもうっすらとわかるのだけれど、このラディカ、光を当てるとややブラウンなのかバーガンディなのかといったような色を見せる。真っ黒ではなくて茶色をものすごく濃くしたような、茶色から作った黒みたいな。光のあて方によっては明らかに黒ではない色を見せる。
買ったばかりの頃、室内の明るいところで「あれ?これダークブラウンだったっけ?」と思ったくらい。

クラシカルなデザインも好みだし、革もラディカを使っていて気合の入った靴。このデザインだったら組み合わせるのはむしろアノネイのボカルーかどこかのボックスカーフのほうが良くね?とも思う。
インバネスくらいかかとをコンパクトにして、気持ちちょっとだけ甲を薄めにして再登場したら(もはやここまで来るとエジンバラではないけど)、いくつか揃えたいな。このデザインでVフロントか内羽根パンチドキャップトウ(セミブローグじゃなくて)が出たら即購入とずっと思っているのだけれど。

2013年6月9日日曜日

雨の日用の靴

僕は雨の日でもレザーソールを履く。

理由は単にレザーソールの靴しか持っていないから。
革靴を履いて仕事をする生活を15年以上やっていれば、デザインとか履き心地とかいろいろな理由で下駄箱に保管されたままになっていきそうな靴がある。
そうした靴を雨の日用に回している。

いまの雨の日シューズのメインはREGALのW134CBとW131CB。
REGALの中ではBTOの木型を使ったやや細身(D Width)のモデルで、アッパーは国産キップ。
購入当初はタイト志向が強かったこともありキツキツを買ってみたが、W134はいつになってもキツキツなままだし(特に左の薬指の先が当たるのがいまいち。サイズが少し小さすぎたかな)、W131は前半分は良い感じなのだがかかと周りがユルユルなことと、アッパーの皺の入り方が大味で今ひとつ気に入らなかったということもあり、登板機会が減りつつあった。

ところがこの国産キップは厚めで丈夫なうえでシミになりにくく(というか目立たず)、悪天候の日は頼もしい味方になっている。まだソールを張り替えていないが、おそらく丈夫な革なのでオールソール交換も何度かできるだろう。

確かにレザーソールは雨水は染みこむし、滑りやすいし、そのままにしておくとカビの原因にもなるし、おまけに雨でふやけてソールの減りが増えるとかいろいろ欠点がある。お客様の先で靴を脱いだとき、靴下が濡れていて嫌な顔をされることがあるかもしれない。
僕自身は訪問先で靴を脱ぐということはまずないので、多少雨が染みこんでも問題ない。
どちらにしてもアッパーはケアをしなければならないし、むしろレザーソールのほうが内部が乾きやすいということもあって、天候にかかわらずレザーソールを履いている。

雨の中レザーソールの靴を履いて、建物の中で硬い床のところに立っていると、床がうっすらと曇る。足が呼吸をしていることの現れだ。雨水を吸うけれど、排出もしている。むしろ雨の日こそレザーソールの通気性が発揮される場面だとも思っている。
ソールの減りは多少早くなるのかもしれないが、よく言われる「何十倍も早く減る」という実感はない。減ったら減ったで張り替えればいいわけで、既存の靴も活用できるし、今更ラバーソールを新調する金額で2回は張替えできるので、コスト的にも大きいとも思わない。

冒頭で「レザーソールしか持っていないから」と書いたが、本音は「雨の日でもレザーソールを履きたい」というところ。

予め雨が降ることがわかっていれば雨の日用のこの2足の優先順位があがるけれど、ここ一発のプレゼンをする日にお気に入りの靴を履いて行ったら、天気予報が外れて雨になったり、夏の暑い日にありがちな夕方の雷を伴う一時的な土砂降りの中外出しなければならなくなることもある。

だから、雨とソールは無関係、雨が降ることがわかっているなら敢えてアニリンカーフを履くことも無いな、という程度。

レザーソールでもラバーソールでもアッパーは濡れるわけで、どちらにしてもメンテナンスは必要。減るといっても雨の中駆けずり回ったりしなければそれほど神経質になることも無さそうだし。(ここまで書いて、自分はあまり外回りが多くない仕事だからこういう結論になるのだと思った。とかく一日外出しているような人であれば、ラバーソールを買うというのは理にかなっているかも)

雨に降られたらいつもよりていねいに手入れをすれば良いし、逆にていねいに手入れをする良い機会だと思っている。 相当土砂降りにやられると、逆に靴の古いクリームが落ちてるんじゃないかと思って、わざわざリムーバー使う手間が省けた気がする。

革は濡れてもきちんと元に戻るからこそ、サドルソープで洗うことができるのだし。

雨に濡れた時の対処は次の3つを念頭にしている。

  1. 汚い雨水を吸っているはずなので、その汚れを取る
  2. 形を整えきちんと乾燥させる
  3. 靴に必要な栄養分の補給をする

まぁ、ふつうに当たり前のことを当たり前にするだけなのだけれど。

雨に濡れた日
家に帰ってきたらまずはじめにやるのが、汚れ落とし。
汚れ落としはまだ濡れた状態の靴をふつうに(固くではなくて)絞った布で軽く拭う。表面に砂や泥が付いていることがあるのでこすったりはせず、異物を取り除くのが目的。
(あまりにも泥や砂が付いているときは、どうせ濡れているのだからシャワーで軽く流してしまう)

次に、乾いた布かキッチンペーパーで表面を軽く叩くようにして表面の余計な水分を取り除く。

ここまでやったら、フェイスタオルか使い古しのTシャツをキッチンペーパーで包んだものを靴の中に入れる。よく新聞紙を入れるとあるけれど、日経電子版にしてから紙の新聞が手元に無くなったのでこの方法に変えた。キッチンペーパーはティッシュより割安だし、結構水を吸うのでおすすめ。

ちなみにフェイスタオルはコンビニで売っているものを靴専用にしている。雑巾でも良いと思うが、表面のザラザラ具合が少なめな方が靴を拭ったりいろいろ使い道があるので。購入当初は水をあまり吸わないため、下着を洗うときなどに一緒に何度か洗濯をしてから使っている。

最初は30分くらいで、それ以降は気が向いたらちょこちょこ入れ替え、寝る前にもう一度入れ替えるという感じ。翌朝雨が止んでいれば中のキッチンペーパーを取り出してベランダの日の当たらない場所に置いて外出。この時シューキーパーを入れたほうが型くずれしないと思うのだけれど、カビが生えるケースがあったので、ある程度インソールが乾くまでは入れないことにしている。

2日目
帰宅する頃にはアッパーは完全に乾いていて、内部に一部水分が残っているという状態になっていることが多い。このくらいになるとシューキーパーを入れても大丈夫そう。濡れた時のメンテナンスはアッパーもそうだけれど、カビにやられやすい内部にも気を配ることが大切だと思う。

そこでいったんシューキーパーを入れてプレメンテを行う。
革が硬くなっていることもあり、キーパーはネジ式のものをややゆるめに入れてスタートする。

最初にステインリムーバーを使うという話をよく見るが、自分は水で濡らして少し絞ったティッシュを靴にペタペタ貼っていく。これは自分で勝手に「汚れ抜き」と呼んでいる。

こんな感じ。

10分から15分ほど経つと、ティッシュの一部が茶色くなる(右足の爪先部分)。日々の汚れとか余分なクリームがティッシュに吸われていく感じ。ティッシュは真水で濡らしているので浸透圧の関係で塩分も吸われている(はず)

ここでいったんティッシュを取り除いてみると、表面がうっすら汗を書いたような状態になっているので、乾いた布で軽く拭う。これを2回から3回繰り返す。
そうするとアッパーの汚れはたいてい取れる。

30分から1時間ほど乾燥させてからデリケートクリームを塗りこむ。またその30分後くらいに、極めて薄くニュートラルのクリームを塗る。2日目はここまで。
初日と同じように、寝る直前にシューキーパーを抜いて屋外に置いておくのだけれど、靴の内部にカビ防止のモールドクリーナーをワンプッシュおく。

3日目
本格的な回復メンテ。
昨日までに雨で汚れた靴の汚れ抜きが終わり、失われた栄養分と油分を軽く補給した。ここまででアッパーはそこそこ回復しているはず。

もしアッパーが塩を吹いている場合は、もう一度2日目と同じ事をする。
問題ないようであればちょうどインソールも乾いてくる頃(と、アッパーの状態も戻りつつある頃)なので、きょうからシューキーパーをきっちり入れてメンテナンスする。
最初に固く絞った布で表面を軽く拭う。これは儀式みたいなもので、ふだんのメンテナンスはともかく、既にキレイな靴にはあまり意味が無いかもしれない。

次に乳化性クリームを塗る。前日にデリケートクリームを塗っているのである程度栄養分が戻っていると思うので、次は油分がそれなりに含まれたふつうの乳化性クリームを使う。雨に降られた靴の時はM.モゥブレイのニュートラルクリームを使っているが、ブートブラックあたりの乳化性でも同じだろう。

30分ほど置いてから、ていねいにブラシをかける。たいていはその待っている間にソール専用のクリームを薄く塗る。僕はシェットランドフォックスのLeather Sole Conditioner(コロンブス製)を使っている。

あとは適当に2、3日部屋の片隅においておくと元通り。
以前に、カビ防止のためにベランダの日の当たるところにおいておいたことがあって、そのまま外出して次の日帰ってきたら表面がざらついてしまったことがあった。その後は日に当てるというのは怖くてできなくなった。なので乾燥はすべて日の当たらないところでやっている。風通し良ければカビが生えること無いので。

気がついた頃に、気休めの補色としてサフィールノワール(ブラック)をうすーく伸ばして、ブラッシングして磨いて終了。

結構メンテナンスに時間がかかっているようにも見えるけれど、作業そのものはそれぞれ数分程度。初日は表面の汚れ落としと内部の水抜き、2日目はアッパーのケア。3日目はふだんのメンテナンスと言う感じ。

これでいまのところカビやひび割れもなく3年くらいやっている(でもこれらの靴がびしょ濡れになったことはそれぞれまだ10回くらいしか無いけど。朝から土砂降りじゃない限り普通に他の靴を履くので)

やっぱりお気に入りの靴は「雨に降られたくない」と思う気持ちは残るのだけれど、せっかく気に入った靴なのだから、ここ一発履きたいときに天気のせいで妥協をしたくないという気持ちのほうが強くなった。いまのところ雨に降られたことが直接の理由でダメになったという感覚は無いし、たまに降られるとかなり本気でメンテナンスするので、まぁ良しと思うようにしているのが大きいかも。


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ブートブラックとシルバーラインの比較

前回 boot black のクリームを塗り分けた靴だけれど、その後2回ほどメンテナンスをしたところ、なんとなく違いができてきたので追記 。

ブートブラック(黒い蓋)とシルバーライン(銀色の蓋)は初回に塗ったときでもしっとり感が違う気がしていたが、しばらく使い分けていると明らかに光り方が違ってきた。

この間、履いたらていねいに両足ブラッシング(このブラッシング用のブラシだけは黒色共通のものなので、多少サフィールなどが上乗せされてしまっているかも)して、翌日キレイな布で磨く。基本的には雨の日用の靴なのだけれど、あれから大雨に降られたことが無いので、クリームは3回履いたら1回塗るくらいのタイミング。(通常のお手入れよりやや頻度高め)
ステインリムーバーなど他のお手入れグッズは一切使わず、きつく絞った布で拭ったあとにクリームを単純に塗り重ねているだけ。(ちなみに一度に塗る量は片足米粒数粒程度)

左側がシルバーライン、右側がブートブラック(黒い蓋の方)
写真で見てもなんとなくわかるようにブートブラックのほうがやや青い色の光をしている。

シルバーラインは表面的に強い光を返すので、光がはっきりとした白色になる。一方ブートブラックはやや奥深い光なので革に(というか多分クリームの色に)含まれる青色を帯びた反射をする。

単体で見ていると全く気にならないが、こうして比較してみるとシルバーラインは少しラップをかけたような感じになっている。やっぱりブートブラックのほうが光り方は好みだ。

シルバーラインはやはり表面で反射をさせるような革向きに思える。「一般向け」とされている所以はガラスの靴にも使いやすいクリーム、ってところだろうか。まぁ、ワックス無しでここ一発で少し光った感じがほしい時なんかも役に立ちそう。 ポリッシュするような向きではなく、手入れにはあまり時間を掛けたくなくてクリーム一つでなんでも済ませてしまうような人たちにはいいかもしれない。

逆に、それなりのカーフを時間をかけて手入れをしていくような場合はブートブラックのほうが軍配が上がる。しっとりつややかな感じのほうが個人的にも好み。

もうしばらく続けてみようかな。

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ブートブラック。


シルバーライン。