2013年12月22日日曜日

雨に降られた靴をケアしてみた - Shetland Fox Inverness -

僕はあまり天候を気にせず靴を履くので、たいていの靴は何度か雨に降られている。
先日は雨に弱いと言われる仏アノネイ社ボカルーをアッパーに使ったインバネス3029SFが雨に降られた。
雨(というか水)に弱いと言われるアニリンカーフだけに、降られた直後のアッパーは情けないくらいに雨ジミが目立っている。

あえて靴にダメージを与えるような履き方をする必要は無いけれど、やっぱりお気に入りの靴はそれを履きたいときに履きたいわけで、余程の大雨でない限りは気にしないで履いてしまう。「雨の日は脱いで小脇に抱えて裸足で歩く」ような靴は僕にはもったいない。

このボカルー、濡れて水ぶくれになるのは百も承知。でもきちんとお手入れするとほとんど元に戻ることもわかっている。今回も適当に乾かしてお手入れしたら元に戻ってしまった。

濡れた日は表面の銀面を痛めないように、軽くティッシュで水分を拭き取っておくだけ。2日ほど経ってからブラッシングで表面の汚れを落としてから雨や泥水を落とす意味も含めて堅く絞ったタオルで軽く拭う。
拭きとった直後。
アニリンカーフは水に弱いので、水気のあるタオルで拭き取ると結構色がタオルに移る。ブラックのクリームを入れるのであまり気にしていないけれど、ひょっとしたらこの工程は革に良くないのかもしれない。
拭きとった後はボカルーお得意の透明感のある鈍い艶感がなくなり、かなりさらっとした表情になる。この時点でクリームもかなり落ちてしまっている感じ。透明感の維持ということだけ見ると濡れないまま維持し続けた場合と差が出るのかな。

拭った直後、今回はサフィールノワールのレノベイタークリームを入れる。デリケートクリームでもどちらでも良いのだけれど、少し保湿しやすいかなという気分の問題。
レノベイタークリームはモゥブレイのデリケートクリームと同じラノリンをベースに、ミンクオイルと蝋が加えられている。これ単独でもお手入れ十分なクリーム。

レノベイタークリームを塗ってブラッシング。あまり強烈な艶はないけれど、上品な雰囲気に。革の素材感を活かした仕上がりなのでこれはこれでありだなぁ。長期保管するような場合はこれで十分なんじゃないかと。

次の日にソールにコンディショナーを塗って、いちばん濡れて油が抜けたと思われるソールを保湿。その後サフィールノワールクレム1925ブラックでアッパーの仕上げ。濡れたり水拭きで落ちた色を補色する感じで。すでにクリームはレノベイターが入っていると思うので、ここはいつもどおり超薄塗り。シワの部分は塗るというよりはていねいに指で上から押し込むような感じ。
塗り終わったらシワの部分のクリームを落とすことと、革の繋ぎ目にもある程度クリームが入るように軽くブラッシング。
しばらくおいてからネル生地でひたすら磨く。余計なクリームを落とすというよりはどちらかと言うと艶を出すためにやっているので、気が済むまでやって終了。

雨ジミがほとんど目立たなくなって、ボカルーのいい感じの艶感が復活。
ちょうどきれいになったことだし、今年はもう出番ないかな。

よく見ると雨ジミ残っているのだろうけれど、それも含めて靴の魅力が増えていくと(勝手に)思っている。新しい靴では得られない靴の奥行きを出すのに雨が手伝ってくれていると思えば、雨に降られるのも悪くない。



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雨に濡れたあと乾かすと革が硬くなる。こういう時はクレム1925のような油性のクリームより、レノベイターのような回復系のクリームが重宝する。いいクリームだと思うけれどなぜかあまり話題に上がらない。

レザーソールにはソールコンディショナーを。ひび割れを防ぎ、ソールが長持ちします。

2013年12月7日土曜日

REGAL 01DRCD が半年経過した

アクセス数を見ていたら、最近はREGAL 01DRCDへのアクセス数がいちばん多い。

01DRCDは仏アノネイのベガノカーフを使ったシンプルなキャップトウ。
実はちょっとロングノーズなアーモンドトウという微妙なバランスで、これまでのリーガルに比べると控えめな甲とかかとといった感じ。土踏まずを絞る一方で、ボールジョイントから先はゆとりがある。

11月の値上げでちょっとだけ高くなっちゃったけれど、それでもアンダー4万円の靴としてはかなりお買い得なのではないかといまでも思う。このシリーズはクオーターブローグ(02DR)やフルブローグ(03DR)など定番ドンピシャのラインナップで、どれも購入意欲をかきたてる。

惜しいのはヒールがゴムなところ。やっぱりレザーソールの靴はヒールまで革のほうが絶対的に格好いい。ただゴムヒールはビジネス上での実用を考えるといいのかもしれない。ユニオンワークスでもヒールをゴムに変えるリペアの人気があるという記事もあったくらいだし。ドレスシューズというよりはビジネスシューズという言い方のほうが合っている。

アノネイのアニリンカーフは雨に弱いというのはよく言われることで、確かに水滴があたって中途半端に乾くと情けない水ぶくれのようなシミになる。乾くと目立たないとはいえ、やっぱりよくみるとシミができているので、やっぱり雨には弱いと感じる。
ただ、ブラックであればきちんと手入れさえすれば気になるほど(すぐに分かるほど)ヒドイものでもないので、それほど天気を気にして履く靴でも無いのかなと思う。この靴はビジネスシューズなのだから。

僕の01DRCDも半年が過ぎて、やっと自然な履き心地になってきた。だいたい週に1回弱くらいのローテーションなので、現時点で30回くらい履いたことになる。この靴は購入当初から光りやすいけれど、より深い感じが出てきたような気がする(気がするだけかも)。全体的に柔らかくなってきたこともあり、また少し緩く(といってもガバガバではなく)なってきたのでデスクワークの時などはほとんど意識しなくなる。

クリームはサフィールノワールクレム1925。購入当初はニュートラル主体で、3か月経過後くらいからブラックを主に使っている。ソールは気が向いた時にシェットランドフォックスのソールコンディショナーを軽く塗る程度。

購入当初3か月くらいは極力雨に降られないようにしていたこともあり(それ以降はほとんど気にしないので何度か降られている)、ソールもつま先が減ったくらいでまだ大丈夫そう。

同価格帯のリーガルと比べると、全体的にやや華奢な印象を受ける。やっぱり2235NA/2236NAあたりの半端ない頑丈さに比べたらへたるのも早いんだろうなと。どちらかと言うとBTOラストモデルのW12xシリーズは頑丈っぽさを感じるけれど、01DR/02DR/03DRはもう少し繊細。ガシガシ履くような場合はBTOラストのほうが良いかもしれない。

釣り込みが少し甘いのか足に合っていないのか、土踏まずのあたりが歪んできている。
この価格帯にしてはかなり絞りこまれたウエストなので致し方ないところもあるのかな。他の靴ではここまでシワが入ることはない。全体的に型くずれしやすいのではないかとも感じる。ここはオールソール時にどのように戻ってくるかが気になるところ。

01DRCDはどちらかと言うとこれまでのリーガルブランドの路線とは異なり、有名タンナーの名前を出してオーソドックスに仕上げた靴。ただ、この手の靴を買う人達は既にシェットランドフォックス買っているだろうから、あえてリーガルブランドで出す意味がいまひとつ不明ではあるけれど、今後もこのくらいの価格帯で長く付き合える正統な靴をどんどん出して欲しいと思う。


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01DRCDのきめ細かく、つややかな素材にはクレム1925を使っています。
全体は薄塗りしつつ、トウの先だけ少し厚塗りするといい感じに仕上がります。

2013年12月1日日曜日

リーガルリペア

ヒールのリペアに出していたY411が帰ってきた。

今回はヒール交換とつま先の補修、かかとの内側ライニングの補強をお願いした。

待つこと1か月くらい、リペア完了で帰ってきた靴は新品同様とはいかないまでも、きれいに磨かれて靴紐も交換されて戻ってきた(元の靴紐も戻ってくる)
雨の日も風の日も、メンテサボリ気味の時期もあったけれど、愛着の湧いた靴がリペアされて戻ってくるとまた感慨深いものがある。

もともとこの靴はアルフレッド・サージェントのOEMで間違いないと思うけど、そうした靴でもリーガルの看板で売ったものはきちんとリペアを受け付けてくれる。(同じサージェント製のオールソールも経験済み)
いまはネットでもリペアを受け付けてくれるところはたくさんあるし、出張ついでにそうしたショップに依頼すれば(返送は宅配便で)いいのかもしれないけれど、わざわざそんな手間なく全国県庁所在地にはほぼあると思われるリーガルショップで受け付けてもらえるのはとてもありがたい。
リーガルブランドのものは製造時の木型が工場にあるらしいのでオールソールするなら純正のメリットが大きいと思う。

パーツは純正の在庫があればもちろん純正。
アルフレッド・サージェント製のときは似たようなソール交換になる。購入当初はブラウンのソールだったが、指定をしなかったらカラス仕上げのソールになって帰ってきたことがあるので、リーガル製以外はなんとなくイメージで決めているのだと思われる。(アッパーがブラックならソールもブラック、ってところか)

仕上がりはとてもていねい。
コバも塗りなおしてくれるので、ヒールを交換したことがわからないくらい自然に仕上がっている。
つま先の補修をみても変な段差は無く、色目の近いものが貼られている。
リペア前の写真が無いので比較できないけれど、そこそこすり減っていたことを忘れてしまう感じになっている。つま先だけ見たら新品っぽい。

なんといってもていねいさを感じるのはかかとのライニング。
革を単に上から縫うのではなく、境目は薄く漉いて貼られている。サージェントっぽさがある手書きの型番標記が半分なくなって、おまけに「MADE IN」で切れてしまいせっかくの売りである「England」が見えないがそんなことは大したことではなく、むしろ同じような素材で段差なく補修されていることのほうが好感触。多少すり減っていたかかとがきれいに元通りになっている。

リペアは決して安くはないので、経済的に靴を長持ちさせるというよりは愛着のある足に馴染んだ靴を長く履けるようにするというところに意味があると思う。

2013年11月17日日曜日

Shetland Fox 3043SF KENSINGTON

シェットランドフォックスで現在入手できる唯一のローファー3043SF(Kensington)
すでにケンジントンは生産中止ということで、在庫限りとなっている。

ケンジントンはシェットランドフォックス渾身の製品だっただけに、おそらくこのまま廃盤になるであろうと思われるのはとても残念。

レースアップのケンジントンはノーズも短く感じられてややコンパクトな雰囲気だけれど、このローファーは意外とロングノーズに見えるのが不思議なところ。ややボリュームのあるトウがこれまたローファーに合っている。
モカシン縫いもていねいなスキンステッチで美しい。

フィッティングは紐がない分甲のあたりがかなりタイト。
初日はあまりにも甲が痛くて4時間着用で歩けないくらいになった。
毎週履いているとだんだんと馴染んでくるのだけれど、1ヶ月くらい間をおいてしばらくぶりに履くと一日の終りには結構痛くなるので、まだまだ履き慣れていないというところ。通算で十数回くらい履いていてそんな感じ。革が伸びることはあまり心配しなくても良さそう。
またこの靴はシューツリーをきちんと入れておくときっちり皺が伸びる。ラディカ皺が残りにくい気がする。

ローファーは紐で調整できない分、購入当初はかなりタイトなものを選ぶべきといわれていて、そのせいなのか実際に靴の作りも同ラストである3014SFに比べて甲はややタイト。比較的甲が薄い僕でもこれだけ痛くなるので、本来ケンジントンにピッタリ合う足を持っている人だと、なれるまでに相当な時間がかかるかもしれない。(僕は、3014SFだと羽根が数ミリしか開かないので、甲というか周囲はそれほどあるとは思えない)
また、捻れ具合も少し控えめでケンジントンにしては直線的。

甲はキツキツだけれど、さすがケンジントンラストだけあって指周りは全く窮屈さを感じない。本当にケンジントンは良ラストだと思う。ラストが良いと紐がなくてもかかとも抜けず歩きやすい。

ケンジントンのローファーはもともと色違い(ベージュ)を持っていて、その履き心地がかなり気に入っていて結局色違いで二足揃えてしまった... そのくらいこの靴は気に入っている。(生産中止だし、ブラックも買おうかと思うほど)

アッパーのイルチア社ラディカは特にブラウン系の色がわかりやすく格好いい。
濃淡があるため表面が立体的に見えて、また艶やかな革。クリームを上手に塗らないとクリーム自体がしみになりかねないので薄塗りでていねいに塗ることが大切かも。
ただ、リーガルに入ってくる革はあまりグレードが高くないのか、ところどころ鮫肌だと思うくらいザラザラしていたり、乾燥肌のようにヒビが入っていたりする。イルチアのゴタゴタが革に現れていることがよく分かる。
リーガル(ビナセーコー?)の職人さんがなるべくアッパーには綺麗な部分を、目立たない部分に質の悪い部分を割り当てているようだけれど、質の悪い部分が多すぎてカバーしきれていない感じ。(バイヤーがそれを承知で買っているのだからしかたないけど...)

ラディカ独特のムラ感で懐が広く、オシャレ感度が低い僕でも合わせやすく、ジーンズからコットンパンツまで不思議とキマってしまう。使い回しの良い靴。

ケンジントンのローファーはBASSあたりが作るローファーとは根本的な方向性が違って、どちらかと言うと上品なスタイルに合うと思う。
トウにもかかとにもしっかりと芯が入っていてよくあるコインローファーよりもフォーマルよりの雰囲気を出している。
ラディカの入手難で生産中止となったこの靴も、国産キップの焦がし仕上げでもすれば十分格好いいのにな。もうシェットランドフォックスではローファーはレギュラーのラインナップに存在しないし、リーガルブランドでもまともな茶系のローファーはなかなか見当たらないので、サイズが合う人は一度現物をみて足入れしてみると良いかも。

ラディカは雨に濡れるとシミが出てしまう。ただ、適当に乾かしてクリームを塗るとほとんど元通りになることが多い。たまに残るシミも、またそれはそれで靴の味でもあるので、あまり神経質に手入れをする程でもないかなと。ソールも耐久性があり、意外と濡れた路面にも強いようなので、あまり天候を気にせず履けるのが良い。(ちなみにこのソール、製造元のビナセーコーが出しているペルフェットでも同じものが使われているモデルがある)

お手入れはサフィールノワールクレム1925のニュートラルを使っている。クリームを塗りこむとき、布に色が少し移るので徐々にアッパーの色は落ちていると思う。ローファーなのであまりつやつやさせたくないこともあってメンテナンス頻度が少ないことと、少し明るくなってもいいかなと思っているので今のところあまり補色は考えていない。

ところでこのローファー、いつになっても専用シューツリー(_291)がきつくて入らない。
おそらくは甲の部分がタイトすぎて、ツリーの前半部が奥まで入っていないからだと思っている。冒頭の写真でも純正キーパーSのバネがかなり閉じている。
専用シューツリーの検品時には実際の靴に入れてチェックしているみたいなので、理屈上は入るはず。日比谷のシェットランドフォックスでも展示品の3043SFに専用ツリーが入っている。ただ、これを無理やり入れてしまうと、せっかくのタイトなフィッティングが緩くなりそうなのでいまのところバネ式使っている。なんだかなぁ。

2013年10月26日土曜日

靴なんだからキズくらいつくでしょ

靴を磨こうと手にすると、ときどきつま先に結構なキズがあることがある。
今回3048SFを磨こうとしたら、身に覚えのないキズが両足についていた。
なぜか両足とも真ん中より外側に同じようについている。
前回履いた時についたキズなんだろうけれど、どこでついたのか記憶が無い。

こういう時こそメンテナンスのし甲斐がある。

僕は鏡面仕上げをしない人なので、つま先やかかとに擦れたキズが入ることはままある。キズが入ったり雨に降られたりは、ちょっとていねいにメンテナンスするいい機会だ。

今回もいつもどおり使うのはサフィールノワールクレム1925。
このクリームは日常のお手入れから、こうしたちょっとした補修目的まで、本当に便利。
キズの補修目的なので靴と同色のブラックを使う。

まず、クリームをいつもより多めの量を取り(今回の程度であれば爪楊枝の頭くらい)キズに塗りこんでいく。塗りこむときははじめはソフトに、次第にキズをならすような感じでぬりぬりする。

待つこと10分。ここでいったんクロスで磨いてみる。

このくらいでほぼキズは目立たなくなる。

あとはふつうのメンテナンス。
傷ついたトウも含めていつもどおりにクリームを塗って、ブラッシングする。今回は最後にクロスをひたすら(と言っても2、3分)かけて終了。


つま先のキズもほとんど目立たなくなっている、というかキズがあることがわからないくらい。


こんな感じで元通りになるので、お気に入りの靴はどんどん履いてしまう。

今回メンテナンスしたシェットランドフォックスの3048SFのアッパーに使われているフラスキーニ社のチプリアは、もともと擦り傷に弱い感じがあるのだけれど、クレム1925を少し多めに塗って磨くと結構回復する。僕はクリーム超薄塗りが基本なので最近まで気がつかなかった。
逆に言えば、この特性は比較的靴のメンテナンス経験が浅く、クリームを多く塗りすぎてしまう人にとっては有利に働くと思うので、シェットランドフォックスの中では比較的エントリー価格に位置するグラスゴーでチプリアが採用されているのはひょっとしたら意図的なのかとも思えてくる。

ま、いずれにしても「靴なんだからキズくらいつくでしょ」という軽い気持ちで考えている。

キズが付いたり雨に濡れたりしても、きちんとメンテナンスすることを繰り返して、新品の靴では絶対に得られない味が出てくるのではないかと。時間の経過とともにみすぼらしくなるのではなく、なんとも言えない奥深な味が出てくるから靴磨きって楽しいんだよなぁ。


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2013年10月12日土曜日

Shetland Fox 502F EDINBURGH

イルチア入荷が無くなって、既に在庫のみの販売になっていると思われる伊勢丹別注エジンバラ、502F。

セミスクエア外羽根クオーターブローグという中途半端(だと思う)なデザインの靴。
ただ、この中途半端さのおかげで、アンタイドなスタイルにも合うので意外と重宝する靴。

アッパーのラディカカーフはブラックだとその艶やかでエレガントな雰囲気がスーツに合い、ブラウンだとムラ感のある立体的な表情がキレイ目カジュアルに合う趣きのある革。シェットランドのイチオシであったのに、入手困難になり今後は使われることは無いだろうと思われる。いま(2013年10月)ならまだイセタンメンズで手に入るのかな。

外羽根エジンバラは内羽根に比べてややボールジョイント周りが緩く、全体的に大きいような気もするけれど、誤差の範囲かな。この緩さのためシワの入り方がイマイチになってしまっている。

ブラックの502Fはセミスクエアでメダリオンのないトウだけをみるとドレッシーだけれど、ギザつきタンの外羽根ブローグはカジュアル感強めと、最初に見たときは違和感ありありだったのが、実は絶妙な立ち位置にある靴なのではないかという気がしてきた。
502Fのタン部分。ギザ付きブローグのためカジュアルな印象。

そもそもこの靴に惹かれたのはこの半端感で、キャップトウでは堅すぎて、セミブローグではビジネス感出過ぎで、フルブローグだと行き過ぎだなと思われるきわめてニッチなスタイルに合いそうだなと。アッパーのおかげもあるのか、外羽根でありながら色気を失っていないところがいい。
ま、個人的にはこの定番から少し踏み外したデザインが気に入ったのだけれど、こういうケースは極稀で、この靴が気に入ったのは偶然の産物だと思う。

ビジネスユースのため、もう少しムラ感は抑えられている方が良いかな。時々ブラックのクリームで手入れをしているけれど、なかなかムラ感が落ち着かない。
キャップの部分に白いムラがある。ブラックのクリームを使い過ぎると、この何とも言えないワインっぽい色が無くなりそうなので5回に1回くらいしかブラックを使っていないけれど、もう少し頻度を増やそうかなとも思う。

シェットランドフォックスはよくも悪くも定番から少しズレた商品展開をする。
やっぱり定番といえば内羽根キャップトウ、内羽根セミブローグ、内/外羽根フルブローグにプレーントウかVフロントあたりじゃないかと思うのだけれど、このラインナップに近いものを揃えているのはアバディーンとアーバインくらい。しかしアバディーンはロングノーズで見た目が定番とは言いがたい(ただ、この靴はエレガントなのでやはりキマるシーンがある)し、アーバインはせっかく見た目はド定番なのにどういうマーケティングからそのラストになったのかと問い詰めたい。だいたい甲が緩いという評価に対してタンパッドで修正ってのが安易すぎる。「ミリ単位」でラストを作っているのではないのか。
一方でラストが人気のインバネスは格好良いのか悪いのか解らない3030SFだとか、ビジネスでもカジュアルでも履くシーンが全く想像できない3033SFだとかだし、このエジンバラにしても当初は他に内羽根プレーントウ(ブローグあり)で、キャップトウが出たと思ったらカラグレインカーフと、実験でもやっているのかと思う。

国産靴に4万も5万も出して買うような人たちは比較的オーソドックス寄りかと思うのだけれど、もうそういう頭のカタイ人はBOSかREGAL TOKYOの九分仕立て作ってって感じなんですかね。
むしろこういうヘンタイ仕様のデザインが欲しい人ほどオーダーって感じだけど。

イルチアを使った靴は生産中止方向だから伊勢丹別注モデルもリニューアルか在庫限り打ち切りかどちらかなんだろうけれど、エジンバラのニーズは結構あるだろうから今度はボックスカーフで作ってくれないかなぁ。そうしたらキャップトウ追加で買っちゃうかも。

2013年9月5日木曜日

シェットランドフォックスのケンジントンが生産中止

シェットランドフォックスのケンジントンが生産中止らしい。

なんでもイルチアの革が調達できなくなったとかで、継続生産ができないとか。
シェットランドフォックスのホームページでアナウンスがされている

ものすごく残念だなぁ...

Made in JAPANの量産型既製靴としては最高にコストパフォーマンスが良い靴で、しかもめちゃくちゃ履きやすい靴だったのに残念でならない。

思えば数カ月前に八重洲のREGEL SHOESで「もうイルチアの革は生産していなくて在庫のみなんです」なんて話を聞いた。
その時はネットでいろいろ調べてみてもそんな情報もなかったし、イルチアのホームページ上でも時にアナウンスが無かったので気にしていなかった。

ただ、この前日比谷のシェットランドフォックスでも「ケンジントンの革が入らなくなっており、追加生産は未定」のような話を聞いていたので、当面は手に入りにくいのだろうと思っていたけれど、まさか生産中止になるとは思いもよらなかった。
ケンジントンについてはブラックの3014SFについて以前書いたけれど、ブラウンのほうが革の表情としては面白く、追加で書こうと思っていたけれど生産中止になってしまった以上、紹介してもあまり意味が無いものになってしまった。
(ちょっとだけここで書くと、ケンジントンのローファー3043SFは本当にいい。僕はブラウンとベージュを持っているけれど、カジュアルに合わせる実力があればブラックも欲しいくらいだ。)

いま思えばストレートチップの3013SFを購入していなかったのが悔やまれる...


せっかくの良ラストなので、何も革が調達できなかったからといって生産を止める必要なんて無くて、アッパー素材を変えればいいのだと思うのだけれど、ケンジントンのウリのひとつがイルチアのラディカだったのだから、生産中止はやむを得ないのか。

ま、シェットランドフォックスで一番人気のモデルだし、ホームページ上でも木型をブラッシュアップかつ、アッパーもイルチアと同程度のクオリティを持つものを開発予定とのことなので、次のモデルに期待するとしよう。ウェインハイムレダーのボックスカーフで作ったシンプルなストレートチップなら欲しくなるかも。次回はラインナップにパンチドキャップトウもしくはセミブローグもお願いします。
伊勢丹別注モデルも追加生産は無いだろうから、新しい別注モデルが出ることを期待したい。

日比谷でもアバディーンやグラスゴーが人気ということなので、次のモデルは多少甲が薄くなってかかとが小さくなることが予想される。それはそれで期待できるかもしれない。

2013年9月1日日曜日

Church's CONSUL 173

キャップトウのド定番、チャーチのコンサル (Consul)。


世界中、どんな場所で冠婚葬祭に出ても、これを履いていれば間違いない。
コバが張り出していて、キャップもぷっくりしているデザインは、やや無骨のように見えるが、英国正統のクラシックスタイルに決まってしまうのだから洗練されているといってもいいのかもしれない。

ちなみに、チャーチ純正の靴紐はかなり太めかつ柔らかめのものが用意されているのだけれど、僕は一般的な(リーガルで買えるコロンブス製の)丸紐に変えている。

7万円を超える国内価格は、一般的には高級靴の範疇に入るのだろうけれど、同価格帯のクロケットアンドジョーンズのハンドグレードラインや、国産シェットランドフォックスよりもアッパーの革質が良いわけでもなく、作りにこだわりがあるわけでもなく、極めてオーソドックスな靴。

素材は「ヨーロッパの最高級タンナーの革を慎重に選んだカーフ」だそう。やや皺が大味に入るところを見ると、国産基準で言うところのキップよりに近い革が使われているとおもわれる。ただしリーガルの国産キップより肌理は細かく、ある程度手入れをしたあとの艶もいくぶんしっとりしている。

このモデルはプラダ買収後の173Fラストなので、旧チャーチに比べるとややロングノーズ。イマドキ基準で言えばふつうといったところか。
シェットランドフォックスのエジンバラとの比較。長さ自体はほぼ同じだが、コンサルのほうがトウにややボリュームがあるため短く見える。

コンサルは最初に履いたときは少し歩いただけで小指が痛くなるなど、やはりつま先がタイトと思ったいたけれど、革の伸びがあるのか比較的沈みやすいコルクなのか3回目くらいで気にならなくなってしまった。

アングロサクソン向けのやや薄いラストのようで、ボールガースから甲までタイト目で薄い僕の足にはわりと合っている。ただ、かかと大きめな作り(だと思う)。あと、当たるほどでは無いけれど、くるぶしのあたりは高めな気がする。
フィッティングはなんとも特徴がなく、土踏まずの絞り込みもがカスタムグレードというたいそうな名前がついている割にはそれほどでもなく、突き上げられる感もない。ボールジョイント周りにも特筆すべき点もなく、いたって何もない。ただ、それだけ履いている間に意識をさせない靴であるとも言える。

チャーチのコンサルは不思議な靴だ。素材も、作りも、履き心地もこれといって目立つところが無いのに、じゃぁたいした靴じゃないかというと絶対にそんなことは無い。デザインのなせる技なのか素材感なのか、極めてフォーマルなスタイルだけでなく、アンタイドの少しラフな格好でも決まってしまう。同じラストと作りでプレーントウがあれば、それこそジーンズにもいけてしまうだろう。コンサルはフォーマルの範疇のカジュアル寄りもカバーする懐の深さがある。

このあたりはクロケットアンドジョーンズのオードリーやシェットランドフォックスのケンジントンのキャップトウとは決定的に異なるところで、こちらの2つはよほどの洒落者でも無い限りは、やっぱりきっちりとしたスーツスタイルにのみ合うように思える。

お手入れはサフィールノワールのブラックを使っている。もともと僕は鏡面仕上げはしない人なのだが、コンサルに関しては特に鏡面じゃないほうがその良さを活かせるような気がする。

シューツリーはいつものディプロマットヨーロピアンを使っている。ネットの情報を見ると、ヨーロピアンでは少し幅が足りないかなという感じも受けたけれど、実際に入れてみると特に革が余っている感じがしないので、多分フィットしているのだろう。

どこかで
「コンサルに始まり、コンサルに終わる」
という名文句を見た。本当にそう思う。
チャーチのどこがいいの、コンサルのどこがいいのと聞かれてピンポイントでどこがいいと答えるのは難しい。でもコンサルは履いてみればわかる靴で、これほどまでに良さを具体的に説明するのが難しい靴も無い。

よく「質実剛健」というキーワードで語られるチャーチ。でも正直、質実剛健だけならリーガルあたりもすごいよ。20年前に買った2236NAなんていまでもふつうに履けるし。(ま、この靴は異常に長持ち。あとに買ったジョンストンアンドマーフィーLS46のほうが先にダメになってしまった)

もし僕が今後手持ちの革靴から一種類しか履けないとなったら、選ぶのはこのコンサルになるだろう。項目別に見るとコンサルに勝っている靴は山ほどある。でも懐の広さでコンサルに勝る靴はそうそう見かけない。

不思議な魅力のある靴なんだな、チャーチのコンサルは。

2013年8月31日土曜日

社会人3年生のビジネスシューズ

「これから革靴をどう揃えるか?」
というテーマで書かれた本やブログを見ていると、多くに次のパターンが紹介されている。
  1. ブラックのプレーントウ
  2. ブラックのストレートチップ
  3. ブラウンのブローグやUチップなど(記事を書く人のセンスと教養による)
これはこれでひとつの回答なのだけれど、ふつうにスーツを着ることが必要とされる職場であれば僕はもう少し保守的な方がいいと思う。

僕がもし社会人3年目で、もう一度新たに靴を揃え直していこうという立場だったらどんな靴を買うだろうか。

社会人も3年目くらいになると、とりあえず晴れの日も雨の日も毎日履いていく靴は最低限あるだろうけれど、周りからもフレッシュマンと違って「社会人」としてやっと見られ初めるようになるこの時期だから、靴も大人入りを目指すのもいいのではないかと。

まずオシャレであるとか、自分の好みよりも「相手にどう見られるか」をキーにして、どんな場所に行っても恥ずかしくない組み合わせを優先する。

結局、
  1. ブラックの内羽根ストレートチップ
  2. ブラックの内羽根ストレートチップ
  3. ブラックの外羽根プレーントウ
という組合せに落ち着く。

手持ちが少ないうちはまずブラック中心に揃えるのがベストかなと。さまざまな価値観を持つお客様に接したり、年配の人に会うような場合はブラウンはキケンである。
堅い職場でブラックの靴がほぼ暗黙の了解として履かれるのは、決して意味のないルールではなく、大きな商談を決裁するキーマンがどういう人かを考えて、正統的で無難なものが選ばれているのではないかと思う。

ブラックとブラウンではブラックのほうがフォーマル度で格上とされている(冠婚葬祭の定石もブラックのストレートチップ)。ビジネスでブラウンの靴を履いて会うという事は、ややカジュアル態度であり、相手の格をややくだけた服装で会う人とみなしている、というメッセージになってしまう。髪の色でも「黒=真面目、茶=軽い」というイメージを持つ人が結構いるわけで、靴でも同じ事が言える場合がままある。

イギリスでは「ブラック=仕事用」「ブラウン=休日用」という考えを持つ人がいるという。さすがに日本ではそう考える人は少数派なものの、ビジネスシーンでのオシャレ感度が高い人はそういう情報を持っているだろうから、意図せずにその情報が人を判断するときに影響することもある。

そこまでを考える人がいると認識をすることがビジネスシーンにおいてとても重要なはず。とにかくブラックにしておけばマイナス点がつかないのだから、あえて自滅するような選択肢を取る必要は無いと思う。

ブラックで統一すると、カバンやベルトもブラックだけで良いので手持ちが少ない時は使い回しがきくというのもある。
メンテナンスグッズもブラックとニュートラルの乳化性クリーム、ブラシも汚れ落としと磨き用1つずつで事足りるのでかさばらない。靴紐のストックも1色で済む。

それに、ブラックの靴はどんな色のスーツにも合わせやすい。


まず最初はストレートチップを2足。
ストレートチップはマジメなスーツスタイルの満額回答で、社会人であれば必ず持っているべきものといわれている。だから最低2足は欲しい。
というのも、冠婚葬祭はブラックのストレートチップに限るのだけれど、1足しか無いとストレートチップを履いた日に雨に降られて、翌日急なお葬式などが入ってしまうと困ってしまう。濡れた靴を連続するか、違う靴を履くか。天気予報が外れることもあるのだから、やはりストレートチップは2足持っているべきなんじゃないかと。
人によってはかなりドレッシーなデザインなのでややくだけたスタイルに合わせるのに違和感を持つ人がいるかも知れない。でも社会人3年生にとって「正装すぎる」ことが問題になることはまずないので(逆は大いに有り得る)、やはり最初に必要なのはストレートチップではないかと思う。

無難なストレートチップ、リーガルの01DRCD。ふだんのビジネスシーンから冠婚葬祭までオールラウンドに活躍する靴。雨に降られるとシミになりやすいので、どちらかと言うと晴れの日向き。

ややスクエアなトウのリーガルW131。アッパーは国産キップ。この素材はややエレガントさに欠けるものの、傷がつきにくく比較的丈夫で雨でもシミになりにくく扱いやすい。デイリーユース向けにはとても適していると思う。僕は雨の日にこの靴を履くことが多いけれど、今のところアッパーは傷んでいる感じでもない。さすがにレザーソールなので少し経つと水が侵入してくるけれど、この靴はレザーソールにしては濡れた時の減りが少ない。ソールが乾いたあとも毛羽立ち感が少ない。


最後にプレーントウ。
はっきり言ってストレートチップ3足でもいいくらいなのだけれど、せっかくなので3足目はプレーントウにしてみる。
オーソドックスな5穴の外羽根プレーントウでも穴の少ないVフロントと呼ばれるタイプのどちらでもいいと思う。3年目なら5穴のほうがいいかな、くらい。過度にトンガリなものを避ければ長い間履けるしスーツスタイルを選ばない。
まだ社会に出て数年の20代ならプレーントウで冠婚葬祭に出てもまぁ許容されるだろうし、比較的マジメスタイルからやや崩し目のスタイルまでカバーできる便利な靴だから、初期のワードローブにあると便利。ただ、シンプルなプレーントウは意外と売っていないもので、国内でそこそこの価格で容易に手に入るものは少ない。
リーガルW134。都道府県庁所在地にはたいていあるリーガルシューズで購入できるプレーントウ。極めてベーシックな形でサイズのほかウイズ(幅)も3種類から選択できる。アッパーはストレートチップのW131と同じ国産キップ。実用的な靴だと思う。


とりあえずこの3足があればなんとかなる。
僕はレザーソール派なので、3足ともレザーソールをピックアップしているけれど、今後、天候にかかわらず外回りが多い仕事に就くことがわかっている場合はプレーントウとストレートチップのうち1足をラバーソールにするかもしれない。
社会人1、2年生の時にラバーソールの靴を何足か買っているので、雨の日対応はそれに任せるというのもある。

本来、ドレスシューズにはレザーソールが合うし、レザーソールの履き心地に慣れてしまうとラバーソールは履きたくなくなるのだけれど、社会人3年目であればそんなにお給料が多いわけでもなく、また他にも使いたいことがたくさんあるので、減りにくい丈夫なラバーソールを選ぶという選択肢も十分考えられる。一方レザーソールの通気性は間違いなく良く、夏に靴内の温度が上がりにくいので快適。多分悩んでレザーソールを買ってしまうだろう。

ちなみに、レザーソールでもメンテナンスさえしっかりすれば雨の日に履いてもそんなに大きな心配をすることはない。ソールがなんであれアッパーは濡れるわけで、違いは滑りにくさと減りにくさくらいではないだろうか。むしろ歩くことが多いからレザーソールの通気性を取るということもあるだろうし、雨の日もレザーソールのほうが蒸れない。減ったら張り替えれば良いと割り切ることもできる。(ただし、お客様先で靴を脱ぐことが多い仕事であればレザーソールは水が滲み込みやすく靴下を濡らすので避けたほうがいいかも)

ついでにお給料がでたりボーナスがでたら買い増ししたいものは、

4足目「ブラックの外羽根クォーターブローグ」
5足目「ブラックの内羽根パンチドキャップトウもしくはクォーターブローグ」

あたり。夏にクールビズ強制の職場だとストレートチップより少しスポーティな感じが入るブローグがあると便利。トウのメダリオンは(若い)女子ウケがあまり良くないことがあるので敢えてクオーターブローグあたりで。(靴に対して正統派の人からすれば下世話なチョイスだけれど、「社会人3年目」という立ち位置を考えると、礼節を保ちつつ、女子ウケすることも大切なので)
ストレートチップ2足に対して、ブローグ系も2足で。4足目を敢えて外羽根にしたのは、ややドレスダウンを意識している。また5足目とあまり被らないようにというのもある。
ブラックのクオーターブローグならネクタイ締めてもサマになるし、アンタイドスタイルにも合う。ブラックなのでカバンやベルトを買い増しする必要もない。

5足あれば当面はビジネスシーンで困ることはなくなる。
3足だと2日連続雨となった時、十分に靴を乾かせたり休ませたりすることが出来ないことがあるので、できれば頑張ってベーシックなものを5足揃え、ここを新たなスタートにしたい。

6足目以降は職場の雰囲気を見ながら好きなものを揃えていけばいいと思うし、少しずつ高い靴を揃えても良いと思う。別にビジネス用の靴はこれで当面(ヘタすれば数年)買う必要もないので他のモノにお金を回してもいいと思う。

靴はその人のファッションに対する意識と傾向をいちばんはっきりと表す。クラシックな基準に合わせればどんな場所でも誰にあっても外すことがない無駄のない選択になるのは間違いない。

実際に僕が3年目あたり(もう20年近く前だけど)に買った靴は旧ジョンストンアンドマーフィーアリストクラフトの外羽根ストレートチップ(なぜかこんなモデルがあった)、モンクストラップ、Uチップ(色は全てブラック)と今考えてみるとビジネスシーンにはちょっとズレたものばっかりだった。当時は雑誌でもスーツスタイルにUチップなんてのもわりとふつうに紹介されていたし、プレーントウといえばオールデンがあちこちで取り上げられていた。初めて内羽根のストレートチップを買ったのは30歳を超えてからと、いま考えると遠回りな揃え方をしていた気がする。



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革靴はどこのブランドの何を履くかというより、どれだけていねいにお手入れするかのほうが大切。帰ってきたらブラッシングして、ときどきクリームを塗っておけば長い間綺麗な状態を維持できます。

2013年8月1日木曜日

Shetland Fox 3029SF INVERNESS

シェットランドフォックスが定番として位置づけているインバネス(Inverness)。


とはいえラインナップされているものはデザインがかなりアグレッシブなので、定番とはいえベーシックなモデルといえるのはこのストレートチップ(3029SF)くらいなんじゃ...
ホールカットのようなウィングチップだったり、羽根の部分だけ色違いのプレーントウだとか変わり種のデザインを用意しているのに、ストレートチップはブラックしか無い等、正直商品開発の人は何を考えて定番としているのか謎なモデルといえる。

丸めのトウ、小さめのかかと、低いけれどあまりそう見えない甲周り。ややロングノーズ。

アッパー素材は仏アノネイ社のボカルー。
キメの細かさとか、手入れしてる時の楽しさとか、磨きこむにつれて鈍く光るところとか、価格を考えるとかなり満足度の高い靴。
ボカルーやベガノは購入時点だとやや艶やかさが足りなくて、どちらかと言うとさらっとした感じなのだけれど、手入れを繰り返すと恐ろしいほどに底光りしてくる。イルチアのラディカとは異なり、ムラ感は無くて極めてシンプルにブラック。クリームの乗りというか吸収が他の革よりも良くて、極めて薄く塗るとどこまで塗ったかわからなくなるくらい。

ボカルーはちょっとでも水が跳ねるとすぐにシミになる。濡れた直後は少し水ぶくれっぽくなって、その後乾いてくるに従いシミとして残る。この手のアニリンカーフの靴を購入するたびに、「今度はていねいに扱おう」と思うのだけれど、帰宅後ていねいにブラッシングすればある程度目立たなくなることが多いし、きちんとメンテナンスすればほぼ元通りになることが多いのでしばらく経つと気にしなくなってしまう。(ズボラになる)

履き心地としてはグラスゴーが見た目以上にゆったりなのに対して、こちらは見た目よりタイト。
甲が低いので、シワが出にくく、また二の甲、三の甲ともに低めで薄めの足でも羽根が適度に開くため、紐でキリキリ締めることができる。購入時点ではキツ目に締めて左足で1cmくらい、右足で1.5cm弱開いていたが、20回くらい履いて左足で数ミリ、右足で5mmちょっとくらいに落ち着いた。
グラスゴーはボールジョイントのどちらかと言うと親指側で支持する感じが強いが、インバネスは親指側のフィット感はそのままに、小指側のフィット感をさらに強めた感じ。ロングノーズとはいえ靴の先端のカーブに入るところが早いのかもしれない。。
土踏まずの感じはグラスゴーとそれほど差がないと思う。
このラストはかかとがコンパクトなため、いい感じにかかとを掴む。このかかとのフィッティングを体験してしまうと、緩めのかかとでは物足りなくなる。

ソールの返りもよく、歩きやすい。ソールのデザインも新品状態ではややもするとゴム底っぽい見た目のグラスゴーよりインバネスのほうがクラシックな感じがする。(誰も見ないけど)
しかも、エジンバラやグラスゴーのソールより減りにくい。

シェットランドフォックスはフラッグシップのケンジントンがかなりマニアックな作りをしているため他の靴が目立たないのだけれど、このインバネスはボカルーを使いていねいな縫製。シンプルなグッドイヤーウェルトであればソールの張替えが何度かできるので、長く履くことができそうなのも安心感。目立たないけど、優等生な靴。
価格もほぼ4万円で、靴が好きな人から見たら高くない、というかむしろ安いくらい。靴はある程度履きこまないとその良さがわからないし、10年後どうなるかはまだわからないけれど、海外のスタンダードクラスの靴と比べても決して劣るところは無いのではないかと期待している。

返すがえすもなぜ定番ラストといっておきながら、セミブローグだとかプレーントウだとかの定番デザインが出てこないのだろう。(REGAL TOKYOの九分仕立てにあるようなプレーントウがあったら速攻で「買い」なのだが)この手の先端が丸い靴のほうがプレーントウとして使い勝手が良いと思う。Vフロントよりは5アイレット外羽根あたりが似合いそう。

インバネスはシェットランドフォックスのパターンオーダーでもモデル別2位と人気なモデルだし、とんがり靴が苦手な人にはベーシックなデザインはウケると思うけどなぁ。
インバネスのようなモデルはチャーチのコンサルやディプロマットのような長く愛されるモデルになってほしい。この辺りのポジションは比較的新しいアーバインがその役割を担うのか?アーバインは甲が緩すぎるのが欠点。

シューツリーは靴のサイズ6に対して、ディプロマットヨーロピアンの39を入れている。
購入当初はバネが完全に閉じるくらいキツキツだったが、今だと5mmから1cmくらいの隙間がある。
バネ式ツリーは常にテンションが掛かった状態になるので、長期に(1ヶ月以上)入れたままだとトウスプリングがなくなってしまうので、ネジ式がいいらしいと日比谷のシェットランドフォックスでは言っていた。プロが言うんだからそうなのだろうけれど、ただネジ式でもそれなりにパンパンにセッティングしたらやっぱり伸びた状態で固定されるんじゃないかなと素人的には思ったりもする。ま、テンションが掛かったままなのと、一定以上は伸びないのとでは確かに長期保管に差が出るかもしれない。

メンテナンスは日々はブラッシングだけ。だいたい3、4回履いたら薄めにサフィールノワールクレム1925を塗り、何回に一回かM.モゥブレイのデリケートクリームを薄く塗る(気休め)。10回も繰り返せば見た目もしなやかになってきて、ソールも馴染んできてかかとが抜けなくなる。

シェットランドフォックスで最初のストレートチップを買うならば、インバネスの3029SFがイチオシ。デザインは奇をてらったものではないし、アッパーも手入れ次第でどんどん成長する。リペアも全国のリーガルシューズで受け付けてくれるしで、安心してガンガン履ける。ブラックはシミになるといっても目立ちにくいので雨に降られてもきちんとアフターケアすれば良いのだから。

Shetland Fox 3014SF KENSINGTON

シェットランドフォックスのフラッグシップ、ケンジントン (Kensington)。

Made in Japan の量産型既製靴最高峰クラス。
素材、製法、ラストも含めたデザインにおいてこだわりが随所に見られる靴。

メダリオンのないフルブローグは個人的にはスーツスタイルに合わせやすいので好印象。メダリオンがないセミブローグがクォーターブローグなら、これは3/4ブローグなのか?

デザインは一見ごく普通のラウンドトウ(ややポインテッドか)。しかしその造形はめちゃくちゃ曲線が複雑に入り組んでいる。中心線を入れようとしても無理みたいな。

前半部分は耐久性と履き心地に有利なグッドイヤー・ウェルテッド、土踏まずあたりの中央部分は薄く仕上げることのできる(屈曲性が良い)マッケイの合わせ技。こういうマニアックな作り方って海外のメーカーにもあるのだろうか?


トウは少しばかりボリュームがある一方で、土踏まずのあたりは思いっきりえぐってあり、しかも厚みも薄い。甲とかかとはシェットランドフォックス再スタート時からのモデル、つまり初期モデルのためやや保守的に大きめ。同じシェットランドフォックスのインバネスやグラスゴーに比べるとハーフサイズ大きい感じで、実際僕はインバネスは6でも指先にキツさを感じるが、ケンジントンは5ハーフでもキツさを感じない。

ハースサイズ落としても、むしろ指周りはインバネスより余裕があって、新品時の小指の圧迫感がほとんど無い。同サイズで比較すると旧ジョンストンアンドマーフィーよりも指周りははるかに大き一方、かと言って全体が緩いわけではなく、甲周り、特に外側が少し薄めにできているようでフィット感はいい。インバネスだとハーフサイズ大きいにもかかわらず小指の先に行くほど圧迫感があるが、ケンジントンではボールジョイントの外側全体がタイトな感じ。(サイズを落としているためボールジョイント周りが小さいのかもしれない)
特に土踏まずの内側もそうだが、外側から甲を抑える感覚は他の靴に無い独特のもの。
比較的緩いと言われるかかとも、ハーフサイズ下げていることとソールの返りの良さのおかげで特に問題ない。
エジプト型の自分の足との相性という意味では、これまで履いた靴の中で1、2を争う履き心地。

アッパーはシェットランドフォックスがイチオシの伊イルチア社ラディカ。独特のムラ感と艶は素晴らしい。
この革(ブラック)は購入時はややムラ感のあるブラックで、ニュートラルでお手入れを繰り返していくと、少し赤みがかってくる。こうなると、光加減、光の種類(日光、蛍光灯、白熱灯)、角度によってさまざまな表情を見せる。

冠婚葬祭用ストレートチップであればブラックを使い続けてみるのもありだろうし、ニュートラルだけでお手入れをしていってブラウン度合いを増すのもありなのかと。表情が多彩なだけに化粧のさじ加減が印象を変える革。

エジンバラの時にも書いたのだけれど、このラディカはリーガルの通販サイトではニュートラルで手入れをしたほうが良いと書いてあるが、リーガルトーキョーではブラックのクリームを使っていた。ニュートラルだけだと全体的に色が抜けてくるので、補色をしつつ、色が入り過ぎたらニュートラルで落とすとか。

ブラックといってもどちらかと言うと赤系のブラックなので、ブラックのクリームを使うならサフィールノワールあたりと相性が良さそう。隠し味としてネイビーを使うのはラディカにおいてはやめたほうが無難かも。僕の中でこの靴はビジネスシーン用とはいえややくだけたポジションなので、ニュートラルでメンテナンスをしている。

ところでこのケンジントン、履き心地に関しては全く問題ない最高の靴なのだが、敢えて苦言を言うならば検品がいい加減なのではないかと感じるところが見られる。

僕の購入したブローグは、ブローギングがきちんと繰り抜かれていないところが3か所あった。ちょっと見ればすぐわかるし、そもそもブローグのウリのひとつはこのブローギングにあるのだから、1足(左右合わせて)で3つもある事自体検品しているのかと疑う。
写真真ん中あたり。他にも大きいもので1つ、小さい穴で1つきちんと抜かれていないものがあった。穴を抜くときにも、縫うときにも、検品でもすり抜けてしまうとはいかがなものか。

ソールの仕上げも結構いい加減である。(購入時に撮った写真)
かかと部分なら試着で多少減るだろうが、全く他に触れることがない土踏まずが全体的に白っぽい。染料が悪いのか検品が悪いのか、そもそもこの程度のクオリティなのか不明。リーガル通販サイトの写真ではもう少し綺麗な感じがする。ちなみに他のケンジントンもソールのヒドゥンチャネル仕上げが雑だったりと、パターンオーダーでオプション価格払ってこの仕上りが出てきたらさすがに怒るわな。
こちらも購入時の写真。この前シェットランドフォックスのBグレードセールの時に似たようなものを見た気がする。(これは正規品)

よく「職人が〜」という表現がなされるが、どう見てもこれは熟練ではない作業員レベルの完成度。手作業の工程があって、さまざまな熟練度の人が作っているのだから、製造過程である程度のエラーは当然に起きるだろう。ただ、製品に最終責任を持つ人がフラッグシップを作っているという自負があれば素人でも気になる程度ものはハネるのがあたりまえで、それが十分にできていないのはリーガル社の体制にどこか問題があるのだろう。リーガルの検品は厳しいということが書かれているブログもあるけれど、安定していないのかもしれない。
ビスポークは別として、既製靴は工業製品なのだから、きちっと仕様どおりに作るってことが大切なわけで、今後のクオリティの向上に期待したい。

ま、このあたりは靴としての実用には全く問題がないので個人的にはどうでもいいのだけれど、靴作りの姿勢や情熱が足りない感じがしてしまうのが残念だった。気になる人はケンジントンを買うときに良くチェックすると良いと思う。
(ブローグのところはむしろ盗まれた時など特定できるから却っていいかもしれないな)

とまぁ、細かいところでのオイタはあったにしても、やっぱりケンジントンはトータルでは素晴らしい靴で、買ってよかったという気持ちに変わりはない。メイド・イン・ジャパンの靴として応援したいし、日々一生懸命作っている現場の人には敬意を示したいとおもう。より品質を向上してもらって、世界に打って出るくらいの気持ちでやって欲しい。

フィッティングはこれまでにない感覚で、レースアップのほかローファー(3043SF)に足入れした時も紐がないのに足に吸い付くというかなんとも言えない感覚。この靴は指周りに余裕があるので、いつもより小さめなサイズにしたほうがフィッティングの真価を発揮しそう。内羽根はこのセミブローグの3014SFのほか、キャップトウの3013SFがある。ぜひケンジントンのラストでセミブローグやVフロントあたりを作って欲しいと本気で思う。タッセルよりも需要がありそうな気がするけど。

シューツリーはケンジントン専用の291を入れている。専用にしては値段も税込み10,500円と良心的だと思う。このツリーはトウスプリングがしっかり取ってあるのがありがたい。入れるときはわりとゆるく、どちらかと言うと抜くときに気合がいるツリー。ちょっと生産量が少なすぎるかな。もう店頭販売の在庫全部オンラインショップに集めて、もう少し在庫をおいてほしい。靴が売っているのにツリーがいつも売り切れではなんのための専用ツリーかわからないので。

ケンジントンの最大の特徴である前半グッドイヤー、後半マッケイという特殊な作りのためリペアが心配だったが、状態にも依るが1、2回はできるっぽい。靴の構造からすればマッケイ部分の状態次第ということだろうか。ただ、オールソールは2万円くらいになるだろうとのこと。
僕は歩く時間が多い日はもちろん、雨でもお気に入りの靴を履きたい人なのだけれど、それは革底はリペアできるという理由だから。グッドイヤーウェルテッドより交換回数が少ないのは気になるところではあるけれど、ケンジントンのソールはシェットランドフォックスの中でも減りにくいと感じているし、いままでも3度以上交換した靴は無いのでローテーションを工夫すればそれほど気にする必要はないかもしれないかな。

2013年7月14日日曜日

クールビズとブローグ

クールビズにはブローグが似合う。

特に外羽根のセミブローグと内羽根のフルブローグがお気に入り。

内羽根セミブローグ、特にブラックのものははやっぱりタイドアップのほうが似合いそうだし、外羽根のフルブローグまで行くとカジュアル度が強くなってしまう(ジャケパンに合いそう)。セミブローグの堅さは外羽根に和らげてもらい、フルブローグのカジュアル度は内羽根で抑えるあたりが範囲かなと。プレーントウは意外に合わせるのが難しい。

トウのデザインもロングノーズ過ぎたりするとコレジャナイ感が強いので、ラウンドトウもしくは控えめなスクエアあたり。

ストレートチップ(キャップトウ)はスーツスタイルの満額回答とはいえ、やはりカッチリとしたスタイルにのみ合う靴で、上半身崩し目なのに足元だけ正装というのはやっぱりちぐはぐしている感が拭えない。

というわけで、やっぱりクールビズにはブローグということになる。

メダリオンはあってもなくても良いのだけれど、スーツスタイルのほとんどをストレートチップでやり過ごす僕としては、トウにメダリオンがないほうが崩しの度合いが少なくて受け入れやすい。

「わかってないなぁ、トウのあのメダリオンのデザインこそブローグの顔じゃないの」

という声が聞こえてきそうだけれど、メダリオンが入ると僕自身が靴の格好良さに負けて、うまくドレスダウンできないというのもある。

ちなみに僕はクールビズでありがちなアンタイド、ボタンダウンをスーツに合わせるのはあまり好きではないので、ふだんはタイを締めるのだけれど、仕事の都合上クールビズが要求されるシーンが多くなってきたので、そうした時にブローグが活躍する。

ポロシャツありのスーパークールビズあたりになれば足元もかなりくだけたほうが良いのかな。見た目を涼しくするという意味では、ライトブラウンなんかもありかもしれないが、せいぜいドレスシャツ系のボタンダウンシャツあたりのクールビズ気取りだとブラックのブローグが重宝する。

無骨なものよりも繊細寄りなものを選ぶことで、ふだんのスーツスタイルにも合わせやすい。タイドアップの時も履いているし。

フルブローグはでも内羽根かつメダリオンが無いことで残るドレッシーさのお陰で、生地の柄を選べば違和感少なく合わせることもできる。
シェットランドフォックスのケンジントンは、ブローグの割にはかなり繊細なのでイマドキの薄手のスーツにも合わせやすいデザインだと思う。

クールビスをどうまとめるかにも依るけど、アッパーはアノネイのボカルーなどのアニリンカーフのように肌理が細かくて革の表面感のあるものが似合いそう。ボカルーは夏にも暑苦しくない秀逸な質感が好きだ。イルチアのラディカのような黒過ぎないブラックも格好いい。日光の下では黒過ぎない色を見せるし。ただ、ラディカはややもすると光りすぎてしまうので夏には蝋分少なめにメンテナンスするほうが良いかな。

2013年7月1日月曜日

Shetland Fox 3048SF GLASGOW

ビジネスシーンではストレートチップを履くことが多いのだけれど、その中でも最近ローテーション頻度が上がっているのがシェットランドフォックスのグラスゴー (Glasgow)。
エジンバラ後継モデルとされている

シェットランドフォックスの中で人気もあるモデルなのか、百貨店からミマツ靴屋まで、いろいろな場所で売っている。

デザインはややロングノーズのセミスクエアトウ(チゼルトウ)。ストレートチップのキャップは大きめ。
控えめなチゼルトウなので、ややスクエアなちょいロングノーズと言った感じ。甲薄め、かかと小さめと言われている。

エジンバラと似ているところはつま先が少しスクエアなところくらいで、別モデルと考えたほうがよさそうなくらい変化している。むしろパッと見はクロケットアンドジョーンズのオードリーに近いかも。
左がオードリー、右がグラスゴー。オードリーより履口が狭い。

ストレートチップの3048SFのほか、クオーターブローグの3049SFもなかなか捨てがたい。

アッパーにはイタリアのフラスキーニ社チプリアを使っている。
このチプリア、ネットでの評判はイマイチ。
確かにアノネイのボカルーやベガノと比較してみると、表面は顔料厚塗りで銀擦りしたようなフラットな感じでクリームの乗りもあまり良くない。

グラスゴー(フラスキーニ社チプリア)のトウ
 
表面が平坦なせいか光が強めに反射している。

参考までにインバネス(アノネイ社ボカルー)のトウ
表面がどちらかと言うと透き通るような感じでさらっとしながらもしっとりしているというなんとも矛盾な感じ。

どちらも同じクリーム(サフィールノワールクレム1925)を使っていて、鏡面仕上げなどはせず仕上げはブラッシングと乾拭きのみ。ボカルーにクリームを塗ると、どんどんクリームを吸い込んで行くため、途中でどこまで塗り終わったかわからなくなることがある。チプリアは油分を弾くのか、表面に薄い膜が張るためどこまで塗ったかわかりやすい。

購入した当初は革が表面的な光り方をして、ボカルーのような深みがなくまた傷もつきやすい感じがした。なんでシェットランドフォックスはこの革を採用したのかなと。
しばらく履いてお手入れを繰り返していくと、柔らかくて足馴染みしやすい革なんじゃないかと思うようになってきた。柔らかい部分はパサついた感じであまり光らなくなってくるものの、トウの部分は相変わらずピカピカだ。
擦れた部分は白くなりやすい。チプリアはどちらかと言うと表面がしっとり柔らかいので擦れたり引っかかったりすることに弱い。履きこんでいくと全体の艶がなくなってくる。最初は色が抜けてきているのかと思ったのだけれど、どうやら表面に細かなシワが増えて、最初のツルッとした表面から反射する光が柔らかくなっているっぽい。外的要因によって影響を受けやすい革かな。結果、アッパーに表情が出てくる。ムラといえばそうなのかもしれないが、ブラックの場合はあまり美しくはない。
このためクリームはニュートラルよりもブラックが良さそう。(購入後はニュートラルばかり使っていたので気がついた。ブラック中心に変えたら少し落ち着いた)

5、6回クリームを塗りこんだ後くらいに初めて雨に降られることがあったが、あまり染み込まず表面でブロックしていた。その後も何度か降られても、今のところシミにもなっていないので、多少の雨ならあまり気にしないで履けると思う。(ただし、きちんとお手入れする必要はある)

デザインやラストなどの靴そのもののポテンシャルはとても大きいと感じる。
冒頭のオードリーと並べてみた画像でもわかるけれど、ロングノーズといってもイマドキのトンガリ靴ではなく、むしろデザイン的に評価されることが多いパリラストと並べても違和感がない出来上がり。
ロングノーズやチゼルトウについては好き嫌いはあるものの、どうしてもダメと思えるほど極端なものではなく、実際はいてみるとそれほどでもなく感じられる。クロケットアンドジョーンズのオードリーがokな人なら問題ないかと。サイズが6の小さめな僕の足だとちょうどいいバランスになる。

肝心の履き心地については、とても気に入っている。
日本のメーカーが、日本人の売りたい層に合わせてラストを調整したものは、こうなるんだと思わせる出来栄え。
僕はクロケットアンドジョーンズの337Eラストを履くと爪先部分はタイトなのに履口部分外側が余り気味になってしまう。グラスゴーではそれがない。幅はふつうで薄めの足に合いやすいデザイン。

欧米人の足を見たことがある人はわかると思うのだけれど、彼らはかなり幅が狭くて丸い足をしている。その割に肉付きがよかったりしてちょうどさつまいものような感じ。一方自分の足をみてみると、平べったくて四角に近い。この差が337Eラストの履口外側の緩さの原因のひとつでないかと。(ただ、絶対的な理由ではないと思う。チャーチの173ラストはワリとしっくりくるので、どちらも定番だが両方に合う人は少ないと思われる)
グラスゴーは薄めの足にフォーカスしてラストを作成しているというプラシーボ効果もあってか、足入れした時の感触は良かった。

グラスゴーのラストは細いわけではない。甲が低いことによって周がやや小さめになっているが、つま先はイタリア製の靴みたいにきついという感じでもなく、見た目以上に余裕がある。かかとが小さめということもあり、ボールジョイント左右(特に親指側)とかかとの三点で足がホールドされ、指は比較的自由だ。見た目よりもはるかに幅がある。土踏まずのアーチもこれまでのリーガルに比べたらはるかに絞っており、そっと良い感じに触れる。(土踏まずをぐいぐい押し上げるような感覚はない)
ケンジントンのようにかなり親指側に寄せたラストなので甲の外側がタイト感を期待したが、こちらはそれほどでもない。アグレッシブなように見えて、わりと懐が広いラストなのではないかと感じる。ちなみに、ケンジントンでピッタリのサイズからハーフサイズ上げるとグラスゴーではぴったり。

足幅ふつう、甲薄めの自分の足(エジプト型)にはなかなかフィット。たいていの靴はジャストサイズ(ややキツ目のフィッティング)にした場合、購入当初は左足の小指と薬指が、しばらく経つとなぜか右足の小指がかなり圧迫されることが多いのだけれど、グラスゴーはそこまででもない。小指側への負担が少ないことがハッキリわかる。

強いて言えばボールガース(ボールジョイントの周囲)の幅というより高さが少しゆるめでアッパーに皺が入りやすいのと、インステップが少し狭いのか履口の外側が少し開いてしまう(いわゆる「履口が笑う」状態)。ま、許容範囲だけど。

シューツリーはディプロマットヨーロピアンの39を入れている。ややきついかな。リーガルトーキョーのネジ式38(たぶんコルドヌリ・アングレーズのOEM)よりもディプロマットのほうがあっている感じ。手元のシェットランドフォックスオリジナルのバネ式ツリーSだとかなりピッタリ。
シェットランドフォックスの靴は木型の中心が内側に寄っているので、一般的なシューツリーを入れると最も高い部分が若干ずれることが多いのだけれど、シェットランドフォックスのシューツリーはその辺りが考慮されていてピッタリはまる。ただ、お値段がディプロマットヨーロピアンがミマツ靴店で5,000円で買えるのに対して、シェットランドフォックスのシューツリーは7,875円もする。

日本のメーカーが現代の日本人(特に若い人)の足型を考慮して、靴オタを満足させるべく、革にもこだわって作っている。いい傾向だと思う。シェットランド価格についてもまぁ、インポート物と比較すれば、むしろバリューなくらいだ。
パターンオーダーでこのストレートチップの先頭にメダリオン入れてパンチドキャップトウ、アッパーをボカルーにして作ったらクロケットアンドジョーンズのベルグレイブ買わなくても済むかなぁ。

2013年6月30日日曜日

REGAL 01DRCD

早いものでもう2013年も半分終わってしまった。2013年前半に買った靴の中でのベストはリーガルの01DRCDだと思う。

リーガルブランドで販売する日本製の靴は垢抜けないというか、革底の多くはハッキリ言えば野暮ったいものが多くて(ファンのかたスミマセン)、ラストもかかとがガバガバだったり甲がゆるゆるだったりで、なかなかこれといったものに巡り合わないと思っていたけれど、かなり気になるモデルが出ていた。

2013年の新モデル、01DRCD。

アッパーはアノネイのベガノカーフ。土踏まずをこれまでのリーガルとは似ても似つかないほど絞ったややロングノーズなラストと、ありがちなとんがり靴ではない丸めのつま先。そして実は靴作りの実力はかなり高いのではないかと言われている Made in Japan。

出張の帰りに靴紐を買おうとして寄った店頭で気になり、物は試しに足入れしてみたところ、その時はなんとまぁぴったり感がしたので、そのまま購入してしまった。35,700円(2013年6月現在、税込)。

これまで最もバリューな靴はシェットランドフォックスのインバネスだと思っていたけれど、それと甲乙つけがたい。ベガノカーフはさすがにガラス仕上げとは雲泥の差があるし、絞った土踏まずがちょうどいい。革にこだわってスコッチグレイン(革の種類じゃなくて、ヒロカワ製靴のほう)を買っていた層にも受けるのではないだろうか。(ちょうどかかとだけゴムってのもスコッチグレインに似ている)

デザインはチャーチのように無骨なわけでもなく、クロケットアンドジョーンズの337ラストのようにヨーロピアンテイストを感じるわけでもなく、極めて和風。ゼロから作ったと言うよりは2235NAを元にクロケットやグリーンのような繊細な靴を目指していったら途中経過でこうなりました、という感じ。シェットランドフォックスのインバネスに近い。
左がインバネス(サイズ6)、右が01DRCD(サイズ24)。トウの形が似ている。01DRCDのほうがやや大きめでやっぱりリーガルっぽい。

フィッティングはシェットランドフォックスのインバネスに比べると甲が広めだが、かかとはBTOラストより小さめ、インバネスより少し大きめといったところ。つま先は結構余裕がある。インバネスが合う人は、履口周りが少し余るかも。若い人向けと言うよりは、少し年齢層高めの40代後半から50代くらいがメインターゲット?

これが国産キップのBTOラストモデルよりも低い価格で売られていることが驚き。
土踏まずの絞り込み度合いから見るに、それなりに技術のいる作業が発生していそうなのに。
ライニングの革の使い方と、かかとのゴムヒールあたりにちょっとコストダウン的な要素を感じるけれど、ぱっと見それくらい。中底のコルクとかシャンクとか、何か目に見えにくい部分が違うのだろうか。

ステッチは細かくて、とても繊細なイメージ。

あと、ライニングのロゴが小さめなのも良いかも。BTOラストモデルは黒地にREGALの文字が金色ででかでかと、まったくもって品がなく安っぽい。そもそもロゴが文字だけなのに大きくしたものだからなんか安物によくあるロゴの主張みたい。あれを見ると買う気が失せる。
ベガノカーフのおかげなのかシワの入り方など、靴全体の見た目で言えば、BTOラストモデルより格段に良さげ。

ちなみに、靴全体の繊細さという観点でベガノがいいのであって、丈夫さ、シミになりにくさでは国産キップのほうがはるかに軍配が上がる。ベガノはちょっと水滴当たるとシミになる(メンテで回復するが)など取り扱いに気を使う。デイリーユースでガシガシ履くようなパターンだとBTOラストモデルほうが使い勝手よいかも。ただリーガルのキップは品質のばらつきが大きくて、プレーントウのW134はそれほどシワが入らないのに対して、ストレートチップのW131はかなり大味なシワが入るなど、タンナーの品質管理が悪いのか、リーガルの仕入れが大雑把なのかわからないところが、いまひとつこのBTOラストモデルを買い増ししないひとつの理由にもなっている。
W131(多分4年経過くらい)のアッパー。かなり大きな皺が入っている。
ただ、BTOの作りはしっかりしているのは間違いなく感じるし、国産キップは履きこむと意外と柔らかくなるので、履きやすさという点では劣らない。

これのセミブローグ(クォーターブローグ)の02DRCDも欲しいんだけど、少しインステップ部分が緩いのよね。インバネスでこのデザインあれば間違い無く買いなのに。
フルブローグの03DRCDはラウンドトウのオーソドックスなデザインで、タンニン鞣しのベガノの良さが最も表現される靴だとおもうので、これも欲しい。

まっとうな靴を戦略的なプライスで出してきたところに、最近のリーガルの本気度を感じる。
社会人デビューで初めて革靴を買うのであれば、10万円払ってグリーン買うより、このモデルをデザイン違いで3足揃えてローテーションさせたほうがはるかに印象いいだろうな。ストレートチップばっかり買っても良さそう。

サイズ24の靴にシューツリーはREGAL TOKYOオリジナルネジ式のサイズ38を入れている(たまたまこのツリーが余っていた)。この靴は少し幅がある感じなので、いつものディプロマットヨーロピアンよりもこちらのほうがあっている感じ。

メンテナンスはお決まりのサフィールノワールニュートラルとブラックを使っている。2回くらいニュートラルを使った後、ブラックを入れるみたいな。ニュートラルはブラックよりもテカリが少なめな気がする。気のせいかもしれないけれど。
購入して何度かのメンテナンスでワリとすぐに艶が出る。磨いていてなかなか楽しいアッパー。
革のソールもどちらかと言うと減りにくく、シミになることをあまり気にしなければ実用度は高い。

靴の多くは直営店のリーガルシューズやリーガルトーキョーで買うことが多いのだけれど、ブランドに抵抗がない人であれば今回みたいな掘り出し物が時々ある。リーガルシューズ専売モデルではないので百貨店でも売っている。こういうの定番にすれば良いのになと。

だいたい3万円から4万円を出せば、海外の5万円から7万円くらいの靴と同程度のクオリティのものが手に入る。3足買う値段で4、5足買えるので、ラストが足に合えば国産も悪く無いと思う。
リーガルの店頭で販売された靴であれば全国のリーガルシューズで修理を受け付けてくれるのもありがたい。イギリス製モデルとして売り出していたアルフレッド・サージェント製の靴でも修理できたのだが、リーガルの工場にはラストがあるのだろうか?ホームページには販売した全モデルのラストがあると書かれているけれど、これまんまサージェントだし。(内側にリーガルのモデル名と併記して99EXラストの表記がある。表記の仕方もサージェントそのもの)
修理代はちょっと高いけどね(オールソールで1.5~2万円くらい。修理後は紐を交換した上でピカピカに磨いて帰ってくる)

価格は感覚的なものなので、安い高いを議論する意味はあまりないと思うのだけれど、シューツリー込みで4万円程度で買えるというのはありがたい。アンダー4万円の靴としてリーガルはシェットランドフォックスのアスコット(国産キップ、たぶんBTOモデルと一緒)、リーガルトーキョーのW931/935(イタリア製カーフと書いてあるが詳細不明)を展開している中で革の質感はピカイチ。

極めてマジメなモデルで、ぜひこういうコンセプトの靴を定番化してほしいと本気で思う。よくいろんな本や雑誌で「社会人がまず揃えるべき靴」っていう項目があると、1.プレーントウ、2.ストレートチップ、なんて紹介がされているのだから、ぜひこのシリーズでシンプルな外羽根プレーントウを作って欲しいな、って。


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01DRCDにはクレム1925が合っているような気がします。
購入当初はニュートラル(無色)を使っていましたが、最近はブラックを薄塗りしています。